4. 年金額が物価や賃金の上昇率よりも低くなる理由
年金額が物価や賃金の上昇率よりも低くなる理由は「マクロ経済スライド」の発動です。マクロ経済スライドは、賃金や物価の伸び率によって、年金の給付率を調整する仕組みです。
賃金や物価の伸びに応じて年金額も増えますが、年金額の伸びを調整することで、財源の範囲内で年金の給付を行えて、結果として長期的な公的年金の運営が可能になります。
将来的な年金制度の維持を目的として、マクロ経済スライドは導入されました。一般的に、賃金や物価が伸びると、給付水準を引き下げます。
年金額を決める場合、現行制度では67歳以下(新規裁定者)と68歳以上(既裁定者)で、計算方法が違います。
- 67歳以下の改定率:前年度改定率×名目手取り賃金変動率×マクロ経済スライド調整率
- 68歳以上の改定率:前年度改定率×物価変動率×マクロ経済スライド調整率
このように、物価と賃金の変動状況によって、年金受給額は調整されます。そのため、年金額の伸び率が賃金の伸び率を下回る状況が生まれます。
5. 次の年金支給日は2025年4月15日
公的年金は、偶数月の15日(土日祝日にあたる場合は直前の平日)に前々月と前月の2ヶ月分がまとめて支給されます。前回は2025年2月15日、次回は2025年4月15日となります。
冒頭で触れたとおり、今年度は年金増額が決定しています。しかし、賃金や物価の上昇率を下回るため実質的には目減り。この理由についても解説してきました。
年金制度は定期的に見直しが行われるため、将来どのように変化しているのかわかりません。現行の制度よりネガティブな方に変化してしまう可能性もあるでしょう。
現役世代の人たちは、公的年金に依存しない老後のマネープランを考えておく必要があります。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 日本年金機構「ねんきん定期便の様式(サンプル)と見方ガイド」
- 厚生労働省「年金制度改革に向けた提言」
- 厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」
- 厚生労働省「給付と負担をバランスさせる仕組み」
川辺 拓也