新NISAやiDeCoなど、非課税制度を活用した資産形成が話題となっていますが、新年度からは資産形成にチャレンジしてみたいと情報収集する人も少なくないのではないでしょうか。
資産形成の目的として、住宅購入資金やお子さんの教育資金などが考えられますが、一番多い目的は老後生活資金です。
老後生活資金の目標金額を設定する上で、将来の年金額を知ることは欠かせません。
今回は、生涯の平均年収450万円の方が、新卒入社で65歳まで働いた場合に受け取れる年金額について計算します。
今後の資産形成プランを検討する上で参考にしてください。
1. 【老齢年金】厚生年金(+国民年金)の年金額をシミュレーション
日本の公的年金制度は「1階:国民年金(基礎年金)」と「2階:厚生年金」による2階建て構造になっています。
現役時代に厚生年金に加入して働いていた人は、老後に国民年金(基礎年金)に加えて厚生年金を受給できます。
国民年金は、保険料納付済期間、厚生年金は給与や賞与などの報酬に応じて決まる保険料や年金加入期間により計算されます。詳しい計算式は、次章で解説します。
では、老後に公的年金(国民年金+厚生年金)をどのくらい受け取ることができるのか。以下のケースでシミュレーションしてみましょう。
- 就職年齢:22歳0ヶ月
- 退職年齢:60歳
- 勤務年数:38年
- 平均年収:450万円
- 加入年月:2003年4月
- 終了期間:2041年4月
2. 平均年収450万円の人が受け取る厚生年金(+国民年金)は月額約15万4900円
シミュレーションの結果、平均年収450万円・勤続年数38年の人が受け取る厚生年金は、国民年金を含め月額約15万4900円となりました。
2.1 厚生年金の受給額の計算式
報酬比例部分= A + B
A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
報酬比例部分(従前額)=( A + B )× 1.041
A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.5/1000×2003年3月までの加入期間の月数
B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.769/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
どちらかの式によって算出されます。また加入の時期によって計算式が異なるため、ここでは2003年4月以降に加入したとして試算します。
2.2 試算条件
- 年収450万円から平均標準報酬額は37万5000円とする
- 2003年4月以降に厚生年金に38年間加入した
- 国民年金は40年間未納なし
- 配偶者や扶養家族はいない
2.3 厚生年金額をシミュレーション
老齢厚生年金額=102万6900円
さらに老齢基礎年金(国民年金)の満額約83万1700円を足すと、合計で約185万8600円となります。
月額にすると約15万4900円です。
実際には38年間を通して年収450万円であるケースはまれですが、一つの目安となるでしょう。
※昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。
※年収÷12で仮の平均標準報酬月額を算出しています。実際には「平均標準報酬月額」「平均標準報酬額」を用いるため、厳密には年収と異なります。
※あくまでも概算のため、実際の受給額とは異なるケースがあります。
※老齢基礎年金は2025年度新規裁定者の基準額です。
3. 厚生年金を月額15万円以上受給している割合
厚生年金(国民年金を含む)を月額15万円以上受給している高齢者はどれほどいるのでしょうか。
厚生労働省の資料から見ていきましょう。
3.1 厚生年金月額ごとの受給者数
- 1万円未満:6万1358人
- 1万円以上~2万円未満:1万5728人
- 2万円以上~3万円未満:5万4921人
- 3万円以上~4万円未満:9万5172人
- 4万円以上~5万円未満:10万2402人
- 5万円以上~6万円未満:15万2773人
- 6万円以上~7万円未満:41万1749人
- 7万円以上~8万円未満:68万7473人
- 8万円以上~9万円未満:92万8511人
- 9万円以上~10万円未満:112万3972人
- 10万円以上~11万円未満:112万7493人
- 11万円以上~12万円未満:103万4254人
- 12万円以上~13万円未満:94万5662人
- 13万円以上~14万円未満:92万5503人
- 14万円以上~15万円未満:95万3156人
- 15万円以上~16万円未満:99万4044人
- 16万円以上~17万円未満:104万730人
- 17万円以上~18万円未満:105万8410人
- 18万円以上~19万円未満:101万554人
- 19万円以上~20万円未満:90万9998人
- 20万円以上~21万円未満:75万9086人
- 21万円以上~22万円未満:56万9206人
- 22万円以上~23万円未満:38万3582人
- 23万円以上~24万円未満:25万3529人
- 24万円以上~25万円未満:16万6281人
- 25万円以上~26万円未満:10万2291人
- 26万円以上~27万円未満:5万9766人
- 27万円以上~28万円未満:3万3463人
- 28万円以上~29万円未満:1万5793人
- 29万円以上~30万円未満:7351人
- 30万円以上~:1万2490人
3.2 厚生年金月額ごとの受給者数
15万円以上~16万円未満に属する人は98万6257人です。
また、15万円以上の厚生年金を受給している人は764万3247人。割合にすると47.6%です。
約50%の方は受給できていますが、男女別にみると男性が66.8%、女性が10.3%です。
そもそも厚生年金に加入して働き続ける女性が少なかった時代なので、こうした男女差があるのは仕方のない側面もあります。
今後は徐々に解消されていくと考えられます。
4. まとめにかえて 国民年金の受給額も一覧表で確認!
年収450万円の方が受け取る厚生年金(国民年金を含む)は月額約15万4900円となりました。
厚生年金の受給金額の目安が明らかになったところで、次は「リタイヤ後の生活が月額15万円で足りるかどうか」「もし足りない場合は、いくら足りなくなるのか」などを明確にし、老後生活資金を設計していくことが必要です。
今お持ちの資産を振り返り、一度考えてみてはいかがでしょうか。
4.1 ご参考:国民年金の受給額
- 1万円未満:5万8811人
- 1万円以上~2万円未満:24万5852人
- 2万円以上~3万円未満:78万8047人
- 3万円以上~4万円未満:236万5373人
- 4万円以上~5万円未満:431万5062人
- 5万円以上~6万円未満:743万2768人
- 6万円以上~7万円未満:1597万6775人
- 7万円以上~:227万3098人
4.2 年金に関する疑問や不安を解消!よくある質問を解説
「年金って難しそう…」と感じている人は、多いのではないでしょうか。でも、基本のポイントを押さえると、意外とシンプルなのです。ここでは、年金についてよくある疑問について、わかりやすくお答えしていきます。
4.3 年金の仕組みってどうなってるの?
まず、日本の公的年金は「2階建て」構造です。下の階が「国民年金」、その上に「厚生年金」があるイメージです。
国民年金
国民年金は、20歳から60歳未満の全員が加入対象。特に自営業やフリーランスの方がメインです。
毎月決まった金額を支払います。いわば、年金の基礎部分です。
厚生年金
厚生年金は、会社員や公務員の方が加入対象です。こちらは収入に応じて保険料が変わるので、もらえる年金額も収入の影響が大きくなってきます。
そのため、個人差が出やすくなっています。
4.4 「繰下げ受給」って実際どうなの?
通常、年金は65歳からもらうものですが、「まだ働けるし、今すぐ必要じゃない」という方には「繰下げ受給」という選択肢があります。簡単に言うと、年金の受け取りを後回しにして、もらう額を増やす方法です。
たとえば、65歳で受け取る予定を75歳まで繰り下げると、年金額が84%も増えるんです。
もし健康で他にも収入源があるなら、繰下げ受給を検討してみる価値は十分にあるでしょう。
4.5 年金や老後資金をもっと増やすには?
繰下げ受給以外にも、年金や老後資金を増やす手段はいくつかあります。
国民年金の付加保険料を払う
自営業やフリーランスの方は、少し追加で保険料を払うことで、将来もらえる年金額をアップできます。
厚生年金に加入する
もし可能なら、厚生年金に加入するのも手です。もし国民年金だけに加入していた場合、会社員になったり、厚生年金が適用されるような働き方を選ぶと、年金額が増えます。
資産運用に挑戦
iDeCo(個人型確定拠出年金)や投資信託での資産運用も有効です。
ただし、これは場合によっては元本割れのリスクもあるので、まずはしっかり調べてからスタートするのが大事。お金の増やし方も「焦らずじっくり」がポイントです。
これで、年金の仕組みが少しクリアになったでしょうか?
ちょっとずつでも理解を深めていくと、老後への不安が少しずつ減っていきますよ。将来に向けて、一緒に準備を始めていきましょう。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 厚生労働省「iDeCoの概要」
三石 由佳