2025年度の年金より、額面が1.9%増額されることが決まっています。
現役を引退し、年金のみの収入を得ている世帯にとってはうれしいニュースなのではないでしょうか。
一方で、年金からは税金や保険料が引かれることも忘れてはいけません。全員ではありませんが、額面からいくらか天引きされたうえで、口座に振り込まれることが一般的です。
では、年金から「税金や保険料」が天引きされる人・されない人の違いはどこにあるのでしょうか。
記事の後半では厚生年金の平均受給額についても見ていきます。
1. 厚生年金と国民年金からも天引きされる「税金と社会保険料」
厚生年金や国民年金から天引きされるお金は、主に次の5つです。
1.1 介護保険料
40歳以上の方はすでに介護保険料を「健康保険に含める形」で支払っています。これが65歳以上になると、単独で支払うことになります。
基本的に、介護保険料は年金から天引きされます。
介護状態になれば介護保険料の支払いが終わると勘違いする方もいますが、一生涯支払い続けます。
1.2 国民健康保険料(税)
国民健康保険とは、協会けんぽや健康保険組合などの会社の保険に加入していない75歳未満の方が加入する公的健康保険です。
65歳から74歳までの世帯の場合、原則として、国民健康保険の保険料(税)も年金から天引きされます。
1.3 後期高齢者医療制度の保険料
75歳以上の方は「後期高齢者医療制度」という健康保険に加入します。
こちらの保険料も、原則として年金天引きで納めます。
※国民健康保険と後期高齢者医療制度はいずれかの加入になるため、同時に天引きされることはありません。
1.4 所得税と復興特別所得税
公的年金額が一定以上となれば所得税が課税されます。
「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。
所得税及び復興特別所得税は、年金より源泉徴収されます。
1.5 個人住民税と森林環境税
前年中の所得に対し、住民税が課税されます。
2024年度からは、個人住民税の均等割と併せて森林環境税が年額1000円課税されるようになりました。
これらも、基本的には年金からの天引きで納めます。
以上が年金から天引きされるお金です。では逆に、天引きされない人はどのような人なのでしょうか。
2. 厚生年金と国民年金から「税金と社会保険料」が天引きされない人とは?
年金から税金や社会保険料が天引きされる条件があり、それらを満たさない場合は年金から天引きされません。
2.1 介護保険料が天引きされない人
介護保険料は、以下に該当すると年金から天引きされずに普通徴収となります。
- 老齢基礎年金等の年額が18万円未満
- 年度途中で保険料が減額・増額になった人
- 年金の受給開始年度
その他、年金現況届の提出を忘れたときなども天引きが止められるケースがあります。
2.2 国民健康保険料(税)が天引きされない人
国民健康保険料(税)も同様に、以下の場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。
普通徴収とは、納付書や口座振替等によって納める方式のことです。
- 世帯主が国民健康保険に加入していない
- 世帯の国保加入者に65歳未満の人がいる
- 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満である
- 世帯主の介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない
- 国民健康保険料(税)と介護保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている
国民健康保険には世帯単位で加入するため、「世帯主が会社の保険に加入して家族が国民健康保険に加入している」というケースでは、擬制世帯主となります。
2.3 後期高齢者医療制度の保険料が天引きされない人
後期高齢者医療制度の保険料についても、以下の場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。
- 老齢基礎年金等の年金額が年額18万円未満である
- 介護保険料と後期高齢者医療保険料の合計額が、年金額の2分の1を超えている
- 介護保険料が特別徴収(年金天引き)されていない
- 年度の途中で加入した(75歳となった)
- 年度の途中で保険料が減額となった
年金から天引きされないとはいえ、納付の義務が残ることには注意が必要です。
2.4 所得税および復興特別所得税が天引きされない人
税金の場合、そもそも年金所得が一定額に満たず、所得税および復興特別所得税が課税されない方もいます。
この場合は、もちろん年金から天引きされることがありません。65歳未満で108万円、65歳以上で158万円以上が課税の目安となります。
なお、遺族年金や障害年金も非課税となるため、所得税等はかかりません。
2.5 個人住民税が天引きされない人
同様に個人住民税に関しても、非課税の場合は天引きされません。非課税になる所得目安は自治体によって異なります。
そのほか、下記の場合は年金から天引きされずに普通徴収となります。
- 老齢基礎年金等の年額が18万円未満
- 介護保険料が公的年金から天引きされない
- 天引きする税額が老齢基礎年金等の年額を超える
また、天引きされるのは公的年金の雑所得にかかる税額のみとなるため、その他の所得に対する税額は天引きされません。
自治体によっては、年金天引き(特別徴収)から普通徴収に変更できるところもあります。さらに、年金天引きの条件は自治体によって異なることがあります。
くわしくはお住まいの自治体窓口にご確認ください。
次章では厚生年金の平均的な受給額を見ていきます。
3. 厚生年金の平均受給額はいくら?
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均額は月額で14万6429円でした。
3.1 厚生年金の平均年金月額
〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
※国民年金部分を含む
厚生年金における「受給額ごとの人数」を見ることで、個人差にも注目してみましょう。
3.2 【厚生年金】受給額ごとの人数(1万円刻み)
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
※国民年金部分を含む
幅広い受給額にばらけていますね。
平均は14万6429円で、厚生年金を「ひとりで月20万円以上」受給しているのは16.3%のみでした。
年金だけで生活できるか不安という方もいるでしょう。
4. 年金だけで老後生活を送れるのか不安…
「年金があるから老後は大丈夫」と思っている方もいれば、「年金だけでは不安だから独自に備えるつもり」という方もいるでしょう。
年金額に個人差がある以上、まずは年金の見込額を把握することが重要となります。
ここでは参考までに、年金だけで生活する高齢者世帯の割合を紹介します。
厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」では、公的年金・恩給だけで100%生活できている高齢者世帯は41.7%であると示しています。
約6割の高齢者世帯が、年金収入だけで生活できていないことになります。
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%:41.7%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80%~100%未満:17.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満:13.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満:13.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~60%未満:9.3%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満:4.0%
若い世代は、そもそも「年金に頼る」という考えの方は少ないかもしれません。
iDeCoや個人年金保険など、貯蓄以外にもさまざまな方法で準備を始めているのではないでしょうか。
年金の見込額をもとに、老後に必要な資金をシミュレーションするのが鉄則です。
このとき、「年金から天引きされるお金がある」ことを踏まえ、例えば手取り80%と仮定して生活できるか考えておくことも大切でしょう。
5. まとめにかえて
年金からは天引きされるお金があります。
現役時代に手にする給料も、額面からさまざまなお金が引かれていますね。額面ではなく、手取り額にて毎月の収支を調整しているのが実態です。
年金生活になっても、同様に「手取り額」が重要になります。
いくら引かれるかは年金額や居住地によって異なりますが、まずはどんな種類があるのかを知ることから始めていきましょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」
- 日本年金機構「Q.年金から所得税および復興特別所得税が源泉徴収される対象となる人は、どのような人でしょうか。」
太田 彩子