3. 年金は何歳から受け取るのが得なのか?
現行制度において、公的年金を受け取る年齢は、60歳から75歳までの間で選択できます。65歳よりも前に受け取ることを「繰上げ受給」、66歳よりもあとに繰り下げることを「繰下げ受給」といいます。
65歳よりも前に繰り上げ受給をした場合、早く受け取れるものの、1カ月あたり0.4%減額された年金額が一生涯続く点に注意が必要です。一方で、繰下げ受給をすると1カ月あたり0.7%増額された年金が一生が続きますが、年金を受け取れない「空白期間」が生じます(減額・増額ともに65歳時点での年金を基準に計算)。
減額や増額の仕組みがあるため、「年金は何歳から受け取るのがお得なのか」という議論がされます。しかし、公的年金の本質は「保険」であり、損得で判断するものではありません。
例えば、年金を受け取り始める65歳以前に亡くなってしまうと、本人は1円も受け取れずに終わります(遺族がおり、要件を満たす場合は遺族年金が支給される)。一方で、終身年金であるため、何歳まで生きていても支給されます。
損得で判断する場合、「長生きするほどお得」といえますが、そもそも自分の寿命はいつまでかは事前にわかりません。つまり、何歳から年金を受け取り始めるのが得かは、考えるだけ無駄といえるでしょう。
4. 年金を受け取り始める最適なタイミングは生き方次第
公的年金は老後生活を経済的に支えてくれる仕組みですが、昨今は70歳以降になっても働く人が増えています。「勤労収入だけで生活費はカバーできている」という状況であれば、できるだけ公的年金を繰り下げたほうが、働けなくなったときの経済的な安心感は大きいでしょう。
一方で、60歳以降に働く意思がなければ、年金を受け取り始めるまでの生活費をカバーする必要があります。カバーする方法として考えられるのは、企業年金やiDeCoの受け取り、これまで蓄えてきた貯蓄の取り崩し、資産から得られる金融所得などが考えられます。
いずれも資産状況や勤務先の福利厚生制度などによって異なるため、個人差があります。つまり、一概に「年金は何歳から受け取るのがよい」かはわかりません。
「何歳まで働く予定なのか」「退職金や企業年金があるのか」「自分の金融資産がどれくらいあるのか」をトータルで考えて、年金の受け取りタイミングを判断する必要があるといえるでしょう。
5. まとめにかえて
年金以外にも働いて収入を得たり、資産から収入を得たりする方法がありますが、老後生活をまかなう軸となる収入は公的年金です。
「何歳から受け取り始めるのが得か」と考えてしまう気持ちはわかりますが、そもそも年金は保険であるため、損得で判断すべき性質のものではありません。
「長生きリスクに備えるための保険である」という点を踏まえ、「働く期間」「保有している資産」などを加味し、自分が安心できるベストな受け取りタイミングを探りましょう。
参考資料
柴田 充輝