2. 厚生年金保険料「標準報酬月額」の上限が引き上げられる?
国の社会保障審議会年金部会では、厚生年金保険料の算定基準である標準報酬月額の上限額引き上げが検討されています。
部会で検討された案は、上限額の引き上げを「98万円」「83万円」「79万円」「75万円」の4パターンを想定したものです。
また、現行のルールでは引き上げ基準を「全被保険者の平均標準報酬月額の2倍が標準報酬月額の上限を上回った場合」としていました。改正後は「上限に該当する被保険者が一定の割合を超えた場合」に上限を引き上げるルールにすることを検討しています。
標準報酬月額は、厚生年金保険料だけでなく健康保険料の保険料算定にも使用されています。健康保険料算定時の等級区分数は、厚生年金保険料よりも多い50等級です。もし75万円まで引き上げられた場合、厚生年金保険料の標準報酬月額の等級は35等級まで増えることになります。
等級が増えれば、32等級の報酬月額範囲は健康保険のものにならって63万5000円以上66万5000円未満となります。よって、月額66万5000円以上の給与を受け取っている人は、標準報酬月額の上限引き上げにより確実に厚生年金保険料の負担が増えるのです。
国は応能負担を目的に今回の引き上げを検討しています。また、保険料が増えることで将来受け取れる年金も増えるとしています。
しかし、現状の物価高や実質賃金低下などから、月額66万5000円(年収798万円)以上の人が負担能力が十分な高所得者とはいい切れません。加えて、厚生年金保険料は企業負担分も存在するため、結果的に企業の人件費の高騰を招く可能性もあります。
標準報酬月額の上限引き上げ期日などについては、正式に公表されていません。しかし、すでに部会で議題にあがり検討が進められていることから、そう遠くないうちに引き上げが決定する可能性が高いでしょう。
次章では、厚生年金の平均受給額を解説します。