1.2 マクロ経済スライドの仕組みをおさえよう
前述の通り、年金額は賃金や物価の変動を考慮して決定されます。
しかし、このとき現役世代の負担が大きくなりすぎないように調整されるのが「マクロ経済スライド」です。
マクロ経済スライドでは、現役の被保険者数の推移と平均余命の伸びによって算出する「スライド調整率」を差し引くことによって、年金額の調整を行います。
2025年度の年金額を例に考えてみましょう。
2025年1月24日に発表された消費者物価指数によると、2024年における総合指数は108.5で、前年対比2.7%の上昇となっています。
年金額が物価の変動を考慮して決定されるのであれば、本来は2.7%上昇しなければ物価上昇分をカバーすることはできません。
しかし、現在の年金制度では物価や賃金の変動率に対してスライド調整率が差し引かれることとなっており、今年は名目手取り賃金変動率(2.3%)からスライド調整率(0.4%)を引いた1.9%が改定率とされているのです。
2. マクロ経済スライドによる実質目減り
つまり、物価は前年に比べて2.7%上昇しているにもかかわらず、年金は1.9%しか上昇していないことになります。
「1.9%の年金額アップ」という言葉だけ切り取ると良いニュースのように聞こえますが、実質は物価上昇分に対して年金の価値が目減りしている状況です。
今後さらに少子高齢化が加速して現役世代が減少すれば、「年金があれば老後は安心」とはいえないことが分かるでしょう。
では、豊かなセカンドライフを送るためにはどのような対策に取り組めばよいのでしょうか。次の章で紹介していきましょう。