終わらぬ物価高に不安はつもるもの。現役時代に「できるだけ貯蓄を増やしたい」と、預貯金だけでなく資産運用を検討される方も多いでしょう。
2024年から新NISAが始まったことにより、世間でも将来のお金についての関心が高まっています。これまで投資とは無縁であった方も、最近NISAやiDeCoなど資産運用を始める方が増えています。
ファイナンシャルアドバイザーである筆者も資産運用についてのご質問を多くいただきますが、運用の目的としては、「老後の不安を解消するため」や「将来ゆとりある老後を迎えたい」という声が多いです。
老後資金については資産形成をすることも大切ですが、同時に重要なのが「将来の年金受給予定額を把握する」ことです。
老後の収入の柱である公的年金は、事前に受給予定額を把握することで老後資金に対してさまざまな用意をすることもできます。
老後の収入源となると「月20万円はもらいたい」と考える方もいると思いますが、実際には20万円以上受給している方は多くありません。
今回は日本の年金制度や受給額について確認していきましょう。
1. 日本の公的年金とは?2階建ての仕組みを解説
日本の「年金制度は2階建て」などと言われます。これはベース部分となる「国民年金」と、上乗せ部分となる厚生年金から構成されるためです。
それぞれの年金制度の基本を整理しましょう。
1.1 1階部分:国民年金(基礎年金)
- 加入対象:原則として日本国内に住む20歳以上から60歳未満の全ての人
- 年金保険料:全員一律(※1)
- 老後の受給額:40年間納付すると65歳以降に満額(※2)を受給できる
※1 国民年金保険料の月額:2025年度 1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2025年度 6万9308円
1.2 2階部分:厚生年金(被用者年金)
- 加入対象:会社員や公務員、一定要件を満たすパート・アルバイトの人が国民年金に上乗せして加入
- 年金保険料:報酬(賞与・給与)に応じて計算される(上限額あり※3)
- 老後の受給額:国民年金に上乗せして受給。厚生年金部分は年金加入期間や納付済保険料により個人差が出る。
※3 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算されます。
1.3 老後に受け取る年金タイプは2種類
現役時代は働き方や立場に応じて「国民年金のみに加入する人」「国民年金と厚生年金の両方に加入する人」に分かれます。これに応じて、老後に受け取る年金も変わります。
次は、厚生労働省の一次資料をもとに、令和の老齢年金世代が実際に受け取っている年金額の平均を見ていきます。
2. 【厚生年金】月額20万円以下の人の割合は?国民年金・厚生年金平均月額はいくらか
厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、60歳~90歳以上のすべての受給権者について、年金額の平均や、個人差・男女差を眺めていきます。
2.1 国民年金
- 全体 5万7584円
- 男性 5万9965円
- 女性 5万5777円
2.2 厚生年金
※国民年金部分を含む
- 全体 14万6429円
- 男性 16万6606円
- 女性 10万7200円
個人差が出やすい厚生年金について1万円刻みで受給権者数をみていきましょう。
2.3 厚生年金の受給額ごとの人数
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
国民年金のみを受給する場合、全体、男女別ともに平均月額は5万円台です。ボリュームゾーンも男女ともに6万~7万円台です。
一方、厚生年金の場合、国民年金部分を含めた平均月額は全体で14万円台でが、男性16万円台、女性は10万円台と男女差が顕著です。ボリュームゾーンも男性は16万~19万円前後、女性は9万~11万円前後と差があります。
また、グラフにあるように男女ともに1万円未満の低年金となる人から、20万円を超える高額受給となる人まで、幅広い分布となっています。
厚生年金の受給者のうち「月額20万円以上」を受け取っている世帯は全体の16.3%となっており、8割強は20万円以下となっています。
公的年金で月20万円以上受給できる人は少数派ですから、早くから老後の備えが必要でしょう。
3. 【年金額は毎年度改定】2025年度は1.9%増。「モデル夫婦」は月額・年額でいくら増える?
公的年金は賃金や物価を考慮して年度ごとに見直しがおこなわれます。2025年1月、厚生労働省は2025年度(令和7年度)の年金額を、前年度より1.9%引き上げることを公表しました。
3.1 2025年度の国民年金と厚生年金の年金額例
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(+1308円)
- 厚生年金:23万2784円(夫婦2人分)(+4412円)
※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額6万9108円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
厚生年金は会社員の夫と専業主婦の妻が想定されていおり、そのモデル夫婦を例として月23万2784円。増額は月4412円増で、年5万2944円増となりました。
夫婦の加入状況によっても年金額は家庭差が大きいので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
また年金額は3年連続のプラス改定にはなりましたが、「マクロ経済スライド(※)」によって物価上昇率を下回る改定率となっており、実質的には年金額は目減りしています。物価上昇に年金額が追い付けていないのです。
※マクロ調整スライドとは:「公的年金被保険者(年金保険料を払う現役世代の数)の変動」と「平均余命の伸び」に基づいて設定される「スライド調整率」を用いて、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するしくみ
少子高齢化の日本では老後の物価高に対する対策についても早くから考えておきたいでしょう。
4. 年金は天引き後で老後の生活費の検討を
今回は年金制度や平均年金月額について確認しました。
平均的な年金だけでなく、確認しておきたいのが基本的には税金や社会保険料が老齢年金から天引きされることです。
- 介護保険料
- 公的医療保険(国民健康保険・後期高齢者医療制度)の保険料
- 個人住民税および森林環境税
- 所得税および復興特別所得税
個人の年金見込み額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できますので、まずはご自身について確認することは大切です。
一方で税金や社会保険料が原則天引きされるため、年金は「額面通りにはもらえない」点は意外な盲点かもしれません。
老後の生活費は天引き後の年金収入で考えましょう。
老後の家計収支がわかれば、それに対する不足分を私的年金や預貯金、資産運用などで貯めていくことになります。
もちろん、いきなりまとまった貯蓄を貯めるのは難しいと思いますが、将来のために毎月の預貯金や積立投資など、コツコツ取り組めることはあるでしょう。
将来の安心のために、今できることを少しずつ調べ、始めてみてはいかがでしょうか。




