夫や祖父母、友達に育児の相談や愚痴を言えなかったり、頼ることができないママは少なくありません。相談する勇気をくじかれてしまう、その原因は何でしょうか。ここでは5つほどご紹介します。

育児は誰でも普通にできて当たり前?

育児や家事というと、「誰でも普通にできて当たり前」というイメージがあります。歯磨きをしたりご飯を食べるのと同じように、掃除や料理をしたり、子どもを育てることは、生きている人間なら誰もが当たり前にできること。勉強や仕事とは違うと思ってしまうのですね。

しかし今や、普通に育児をするのは難しくなりました。現代では「赤ちゃんを抱くのは我が子が初めて」という、育児の経験も知識もない女性が1人で育児をするワンオペ育児が主流に。人間の長い歴史を見ても、母親が1人で育児をするというのはここ最近のこと。子育ての難易度は上がっていると言えるでしょう。

そもそも子育ては、簡単なことではありません。身の回りのことが何一つできず、目も手も離せず、モラルや理屈も通用しない子どもを、心身の発達を見ながら根気よく育てていくことは容易ではないのです。「周囲に頼らず普通に子育てができて当たり前」なんてことはあり得ないと知りましょう。

直接話せないとハードルが高くなる

日常的に身近に育児の協力者がいれば、些細なことでも相談したり、愚痴を吐き出すことができます。しかし1人で育児をしていると、相談や愚痴を言うにも、LINEやメール、電話というアクションをとる必要があります。

育児中は些細なことでも不安になるママも多いですが、「こんなことで相談したら笑われるかも」「『心配し過ぎ』って煙たがられるかも」と相談することをためらってしまいます。何らかのアクションを挟むことで、「些細なことを、気軽に相談する」ハードルが高くなっているのですね。

「これくらい大丈夫」という感覚は、育児の経験を重ねなければ分かりません。些細なことでも、恥ずかしくても、相談することで段々と知識がついていきますし、その積み重ねが経験となっていくでしょう。相談して何も問題なければ、それが一番。迷ったら聞くという癖をつけたり、聞きやすい人(身内はもちろん、保健師さんや小児科医など)を見つけてみましょう。

完璧主義的な性格

人に甘えるのが苦手だったり、完璧主義の女性も少なくありません。今の子育て世代は大学進学し仕事を持つ女性も多いですから、「今まで勉強も仕事もオシャレも自分なりに頑張ってできたんだから、育児だって自分の思う通り完璧にできるはず」と張り切るのです。

しかし育児は、仕事や勉強とは違います。勉強や仕事は、自分が頑張れば頑張るほど成果が出ます。一方で育児の場合、乳幼児期は1日中子どもペースの生活になりますし、人間が相手。我が子とはいえ自分とは違う1人の人間相手ですから、何が正解か本当の意味では分からないですし、完璧な育児というのもできないものです。また、育児を完璧にすることが正解かさえも、確かであるとは言えないでしょう。

完璧主義だったり人に頼るのが苦手な人にとって、育児はそれまでの自分を変えるキッカケになることでしょう。手を抜くことや人に頼ることを覚えると、楽しみや人との交流が増えます。これまで以上に人生が豊かになるでしょう。

疲れている夫に迷惑をかけたくない

相談したり愚痴を言う相手なら、夫がいるだろうと思われるかもしれません。しかし夫に対しても、遠慮する女性は少なくありません。仕事で疲れている夫に、愚痴を言えば余計疲れさせてしまう。夫に負担をかけたくないと、言葉を飲み込んでしまうのです。

育児は夫婦でするものですし、2人の子どもですから、愚痴や相談も言って良いのです。児童精神科医の佐々木正美氏は、著書『子どもへのまなざし』で「夫とのコミュニケーションに満足を感じているお母さんは、同じように疲労を感じにくいし、いらだちにくいし、不安も感じにくいのです」と言います。

環境的にワンオペ育児が仕方なくても、コミュニケーションをとることで育児ストレスが軽減されます。まずは夫婦関係から見つめ直してみることも大切でしょう。

親に心配させたくない

実の親に相談すればいい、と思う人もいるでしょう。これも簡単なことではありません。成人した大人であり、自分も母親になったのだから、親に心配をかけたくないと思う女性は多いものです。

筆者にも子どもが3人いますが、素直に親に相談できるようになったのは、2人目の産後からでした。「子育ては1人でするものじゃなかった。様々な大人と触れ合うことは子どもにとっても大切だ」と気付いてから。それまで「人に頼らないのが大人である」と思っていましたが、「様々な人と関わりながら、自分のできることに励むのが生きることである」と気付いたのです。

「親は子どもに頼られたいと思っている」ということにも気付かされました。成人すれば親とは物理的な関わりが減りますが、親の方はいつでも子を想い、気にかけています。些細なことでも相談するとコミュニケーションが増えますし、内容によっては嬉しそうに教えてくれることもあります。親を心配させたくないから育児相談しないというのは、子の側の杞憂なのかもしれません。

1人で育児の悩みを抱え込んでしまう女性は、非常に多いでしょう。周囲が相談しやすい空気でいることも大切ですし、本人が周りに心を開く勇気を持つことも、親子ともに笑顔の多い育児をするには大切だと思います。

宮野 茉莉子