半導体ファンドリー大手の一角を担う米グローバルファウンドリーズ(GF)が追い込まれている。先ごろ7nmプロセスの開発における無期限延期を発表、今後は特殊なニッチプロセスを軸に事業展開していくことを表明した。半導体ファンドリー分野では、台湾TSMCが独走態勢を築くなか、GFをはじめとする同業他社の窮状が明るみに出る事態が相次いでいる。

AMD前工程工場が前身

 GFは、米AMD(米カリフォルニア州サニーベール)とアブダビのAdvanced Technology Investment Company(ATIC)の共同出資により2009年4月に設立された半導体専業ファンドリー。AMDが保有していた前工程製造拠点を擁し、強力な資本力を背景に米国本社のファンドリー企業として唯一世界規模で展開。その後、シンガポールのチャータードセミコンダクターを買収、事業規模を拡大させている。

 生産拠点は独ドレスデンのほか、ニューヨーク、シンガポールの世界3カ所に300mm工場を保有。15年にはこれに加えてIBMから取得した生産拠点(イーストフィッシュキル、エセックス・ジャンクション)の2拠点も加わっている。

 設立当時から、TSMCの対抗勢力として期待を集めていたが、近年は微細化競争にて後塵を拝す状況が続いていた。非上場企業のため、正確な業績を把握することはできないが、長年赤字経営が続いていたものと見られる。

7nm開発の無期限延期を発表

 こうしたなかで、同社は8月末に7nm世代のプロセス開発を無期限で延期すると発表した。同社の先端プロセス開発は、14nm世代において韓国サムスン電子と協業。その後、独自路線で開発を続け、10nmをスキップし7nmに開発リソースを集中させていた。

 当初予定では、ニューヨーク工場(Fab8)を量産工場と位置づけ、18年4~6月に最初のテープアウト(設計完了)を予定していた。さらに、7nm世代にあわせてEUVリソグラフィー装置も導入済みで、先端プロセス開発を続ける数少ないファンドリー企業の1社であった。

 しかし、先端プロセス開発における投資負担は重く、さらに製造難易度も高くなっていることが障壁となっていた。先端プロセスを採用するファブレス顧客の数も減少傾向にあるなか、同社では技術ポートフォリオの見直しを実施。18年にCEOに就任したTom Caulfield 氏のもと、バルクCMOSプロセスではなく、特色あるファンドリー事業を展開していく方針に転換を図った。今回の発表に先立ち、GFの主要顧客であるAMDもサーバー向けCPUおよびGPUをTSMCで製造していることを明らかにしている。

 7nm開発の無期限延期を発表する一方、今後は開発リソースを14/12nm世代にシフトさせていく。同世代では強みのRFや組み込みメモリーを組み合わせて、顧客への提案を強化していく。また、FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター)プロセスにも引き続き注力しており、他社との差別化技術と位置づける。

中国・成都新工場にも暗雲

 また、GFは17年2月に中国・成都での300mm新工場の建設も発表しているが、同工場の立ち上げも遅れているもようだ。具体的には、中古装置の通関トラブルで保税倉庫に装置が足止めにされたままになっている。また、次期投資の22nm生産ラインの立ち上げ時期を巡って、成都市政府がGFに対して履行遵守の確約を求めていることも遅延に影響していると考えられる。

 GFは成都300mm工場の第1期投資で、130~180nmのロジック製品の製造を計画している。一般的に130nm製品の製造には200mmウエハーが使用されるが、GFはシンガポール300mm工場の生産ラインや、過去に台湾プロモスから購入した中古装置など月産能力2万枚を成都工場に移設することを計画している。

 第1期投資に続き、GFは19年末に第2期投資で22nmのFD-SOIプロセスの製造を予定している。成都政府にとっては、この22nmの工場誘致が主目的で、GFが22nm生産ラインの立ち上げを遅延したり、試生産用の小規模ラインしか構築しなかった場合、成都政府はGFの工場に多額の資金支援をした意味がなくなってしまう。そのため、成都政府は130nmの生産ラインを立ち上げる前に、22nm生産ラインの具体的な立ち上げスケジュールをGFに確約させようとしているもようだ。

 米中ハイテク摩擦によって、米国企業による中国へのハイテク投資が停滞する懸念があるため、成都政府は「戦略的前倒し調整」と呼んで、GFに第2期投資スケジュールの履行責任を求めているとみられる。

 先端プロセス投資を凍結したなかで、中国新工場は頼みの綱ともいえる案件だ。もし、これが暗礁に乗り上げるようなことがあれば、GFはまさに八方塞がりといえる状況に陥ることは目に見えている。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳