筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)をしており、お金に関する様々なご相談を受けるのですが、ご相談内容として多いのが「将来の年金生活について」です。

老後、公的年金だけで生活していけるのかどうか…不安に感じている人がたくさんいます。

2024年12月、厚生労働省年金局より公表された「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢年金の平均受給額は国民年金が月額5万7584円、厚生年金(国民年金部分を含む)が月額14万6429円です。

ただし、年金受給額は個人で異なるものです。中には月額30万円以上を受け取る高額受給者も。

本記事では、現在のシニア世代の年金受給額について詳しく確認していきます。高額受給者はどのくらいいるのか。また、現役時代の平均年収がどのくらいあれば高額受給者となるのか。老後対策の参考にご覧ください。

1. 【仕組みをおさらい】日本の年金制度は「厚生年金と国民年金」の2階建て構造

日本の公的年金制度は、「国民年金(基礎年金)」という基本的な部分と、それに上乗せされる「厚生年金」の2つの制度によって成り立っており、これらは「2階建て」で構成されています。

また、加入する年金制度は働き方や立場により異なり、「国民年金だけに加入する人」と「国民年金と厚生年金両方に加入する人」がいます。

【写真3枚】公的年金制度の仕組み、《2枚目》厚生年金「月額30万円以上」を受給する高額受給者の割合をチェック

公的年金制度の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」をもとにLIMO編集部作成

「国民年金」と「厚生年金」の基本的な概要を見ていきましょう。

1.1 【1階部分】国民年金の加入対象者・保険料・年金額

国民年金の1階部分に当たる加入対象は、原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人です。

職業や収入に関係なく、60歳までの40年間(480ヶ月)にわたって国民年金保険料を納める必要があります。

ただし、第二号被保険者は厚生年金保険料を納め、第三号被保険者は保険料の納付が不要なため、国民年金保険料のみを納める必要があるのは、自営業などで働く第一号被保険者のみです。

40年間保険料を納めた場合、老後には満額の国民年金を受け取ることができます。

※1:国民年金保険料は年度ごとに改定され、2024年度は1万6980円(月額)
※2:国民年金の満額は、2024年度は6万8000円(月額)

1.2 【2階部分】厚生年金の加入対象者・保険料・年金額

第2号被保険者は、国民年金に加えて2階部分の厚生年金にも加入するため、老後の年金は「国民年金(老齢基礎年金)」と「厚生年金」の2階建てとなります。

厚生年金の保険料は、給与や賞与などの収入に基づいて決まるため、受け取る年金額には個人差があります。

このように、国民年金と厚生年金では、保険料や年金額の決まり方が異なります。

そのため、国民年金のみを受け取る場合と、厚生年金も合わせて受け取る場合では、年金水準に大きな違いが生じやすくなっています。

たとえば、国民年金だけに加入している人が「月額30万円以上」の年金を目指すことは現実的に不可能です。

一方で、厚生年金に加入している人でも、老後の年金額は現役時代の収入によって大きく異なります。

次章では、現在のシニア世代が受け取っている厚生年金の平均月額を見ていきましょう。