50歳代になると、退職後の老後生活について考える機会が増えるでしょう。収入は給与ではなく年金がメインとなるため、生活費のやりくりや貯蓄額について、今一度見直しておきたいところです。

将来の年金受給額は、毎年送られてくるねんきん定期便で確認できます。とはいえ、毎年細かくねんきん定期便をチェックしない人も多いでしょう。受給が迫ってきたなかで初めて細かく内容を見て、内容に驚いたという人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ねんきん定期便でチェックすべきポイントについて解説します。また、ねんきん定期便の仕組みや注意点についても紹介します。

1. ねんきん定期便の仕組み

ねんきん定期便は、毎年自分の誕生月に日本年金機構から送られてくる書類です(※)。年齢によって送られてくるものや記載される内容などが異なります。

【写真全5枚】1枚目/ねんきん定期便《年齢別で異なる書式や記載内容》、2枚目/ねんきん定期便の見本1/5

ねんきん定期便《年齢別で異なる書式や記載内容》

出所:日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」

50歳代は、50〜58歳と59歳とで送られてくるものが異なります。50歳〜58歳で送られてくるのは、ハガキのねんきん定期便です。記載されているのは以下の内容です。

  • 保険料納付額
  • 月別状況(直近13月)
  • 年金加入期間
  • 老齢年金の種類と見込額

直近13カ月間の保険料納付状況や見込受給額などを確認できます。

一方、59歳のときに送られてくるねんきん定期便は封書のものです。記載内容は以下のとおりです。

  • 保険料納付額
  • 年金加入期間
  • 老齢年金の種類と見込額
  • 年金加入履歴
  • 月別状況(全期間)

59歳時点のねんきん定期便は支給直前ということもあり、これまでの年金加入履歴やすべての期間の保険料納付状況などが追加で記載されます。できる限りよく目を通しておいたほうがよいでしょう。

では、ねんきん定期便のチェックすべき項目について、次章で解説します。

※1日生まれの方は、誕生月の前月に届くよう郵送

2. ねんきん定期便のチェックすべき項目5つ

50歳代で受け取るねんきん定期便には、1枚のハガキにさまざまな情報が網羅されています。しかし、すべてを細かくチェックするのは時間がかかり、面倒という人もいるでしょう。

受給前に確かめておきたいポイントを5つに絞って紹介します。この5箇所だけはぜひチェックしてみてください。

2.1 繰下げ受給をした場合の受給額

繰下げ受給をした際の受給額(図:b、c欄)は、以下の3つのパターンの受給見込額が記載されています。

  • 繰下げなし
  • 5年繰下げ
  • 10年繰下げ

年金の繰下げ受給は、年金の受給タイミングを遅くすることで1カ月あたり0.7%の年金が増額される制度です。繰下げは最長10年まで可能です。

84%増額時の金額(図:c欄)と、65歳時点での見込受給額(図:b欄)を10で割ると、1年間繰下げしたときに増える金額がわかります。繰下げ受給の申請は年金受給前にする必要があるため、繰下げを検討している人は、いくら増やせそうなのかあらかじめ確かめておきましょう。

60〜65歳から年金の受け取りを開始したい人は、この項目は確認不要です。

2.2 月別の納付状況

月別の納付状況(図:d、e、f欄)には、直近13カ月間の保険料納付状況が記載されています。納付状況は各欄に文言で表示されます。

ねんきん定期便《国民年金 納付状況の見方》4/5

ねんきん定期便《国民年金 納付状況の見方》

出所:日本年金機構「令和6年度「ねんきん定期便」(ハガキ)の見方(50歳以上の方)」

「納付済」と記載されていれば、保険料は問題なく納められています。ねんきん定期便作成時点で納付状況が未確定の月については「確認中」と記載されています。

一方「未納」と書かれている欄があった場合、その月の保険料は納められていません。未納の場合は督促状が届いたり延滞金がかかったりします。最悪の場合、財産差し押さえとなるため、必ず納付しましょう。

このほか、免除や猶予の状況なども確かめられます。「未納」の文字がないかだけよく確かめておきましょう。

2.3 これまで支払った保険料

これまで支払った保険料納付額(図:h欄)には、国民年金・厚生年金合わせていくら保険料を納めたかが記載されています。納めた保険料と受給見込額を照らし合わせて「何年受給すれば元が取れそうか」を確かめておくとよいでしょう。

令和6年度の国民年金保険料が1万6980円、国民年金の満額受給額が81万6000円ですから、国民年金のみの受給者でもおよそ10年で元が取れます。厚生年金も併せて受け取るなら、より早く元がとれる可能性が高いでしょう。

2.4 受給資格期間

65歳から受け取れる老齢年金を受給するには、最低でも120月(10年間)保険料を納める必要があります。ねんきん定期便の「これまでの年金加入期間」の太枠の欄(図:i欄)を確認して、数字が120以上となっているか確かめましょう。

国民年金・厚生年金のほか、受給資格に合算される期間を合わせた数字が120以上であれば、65歳から年金受給が可能です。よって、国民年金・厚生年金それぞれの加入月数が120月でなくても構いません。国民年金加入期間が70月、厚生年金加入期間が50月であっても、合計すれば120月となるため、年金の受給資格を得られます。

加入期間が120月に達していない場合は、残りの年数で120月を超えそうかどうか確かめておきましょう。もし60歳までに120月に達しなくても、年金制度を正しく活用すれば問題ありません。厚生年金は働いていれば原則70歳まで加入できますし、国民年金は20〜60歳までの納付月数が480月未満であれば、60〜65歳で国民年金へ任意加入(※)できます。

※年金の受給資格期間を満たしていない65歳以上70歳未満の方も任意加入が可能

2.5 受け取る年金の種類と見込額

最も重要ともいえる「受給見込額」(図:k、l欄)は必ずチェックしておきましょう。基礎年金は受給資格さえ満たせば誰もが受け取れる年金です。厚生年金は会社員や公務員などが受け取れる年金です。それぞれの年金額の合計と、月あたりいくら受け取れるのかを確かめておきましょう。

基礎年金については、加入月数が480月未満の場合、満額で受け取れません。前述の加入月数を見たうえで受給金額を確かめ、場合によっては任意加入制度の利用を検討するとよいでしょう。

では、次章ではねんきん定期便を見る際の注意点を解説します。

3. ねんきん定期便を見る際の注意点

ねんきん定期便を見る際は「実際に支給される金額は記載の金額と異なる場合がある」点に注意しましょう。

ねんきん定期便に記載される金額は、額面金額です。実際には一定条件を満たすと年金から税金や社会保険料が差し引かれるため、支給される額は記載の額より少なくなります。

年金から引かれる税金や社会保険料は、以下のとおりです。

 

〈所得税〉

  • 65歳未満:年間の年金受給額が108万超
  • 65歳以上:年間の年金受給額が158万超

〈住民税〉

以下の条件をすべて満たす場合

  • 65歳以上
  • 老齢もしくは退職を理由に年金を受給
  • 年間の年金受給額が18万円以上

〈国民健康保険料〉

以下の条件をすべて満たす場合

  • 後期高齢者医療制度の該当者を除く65歳以上75歳未満
  • 老齢・退職・障害・死亡を理由に年金を受給
  • 年間の年金受給額が18万円以上

〈後期高齢者医療保険料〉

以下の条件をすべて満たす場合

  • 75歳以上か後期高齢者医療制度の該当者
  • 老齢・退職・障害・死亡を理由に年金を受給
  • 年間の年金受給額が18万円以上

〈介護保険料〉

以下の条件をすべて満たす場合

  • 65歳以上
  • 老齢・退職・障害・死亡を理由に年金を受給
  • 年間の年金受給額が18万円以上

※国民健康保険料および後期高齢者医療保険料は、介護保険料との合計額が特別徴収対象年金額の2分の1を超える場合は、天引きされない。

月あたりでは数万円が差し引かれますが、1年に換算すると数十万円の金額が引かれます。いざ支給が始まったときに「ねんきん定期便に書いてあった金額と違う」と驚かないよう、年金にかかる税や社会保険料については必ずおさえておきましょう。

4. まとめ

ねんきん定期便は、将来受け取る年金の情報をギュッとまとめています。その分情報量が多く、なかなか見る気が起きない人も多いでしょう。ポイントを絞って確認すれば「将来いくら受け取れるのか」「保険料はきちんと納められているか」がわかります。

一方で、手取り年金額はねんきん定期便だけでは判断できません。実際の手取り金額を知りたい人は、税金や社会保険料の金額をあらためて自治体に確認してみるとよいでしょう。

参考資料