TDKはコンデンサーやインダクターなどの電子部品メーカーとして広く認知されているが、半導体後工程装置メーカーとしての顔を持っていることは実はあまり知られていない。フリップチップ(FC)実装に用いるFCボンダーでは業界トップシェア(C4リフロープロセス除く)を獲得していると見られ、専業装置メーカーとは一線を画したユニークな装置事業を展開している。
もともとは「社内設備」として開発
同社は連結売上高1兆2717億円(2018年3月期)を有する国内有数の電子部品メーカー。主力はコンデンサーなどの受動部品で売上高全体の約34%を占め、これにリチウムイオン2次電池などのフィルム応用製品(売上高構成比29%)、HDD用ヘッドなどの磁気応用製品(同26%)が続く。今回の主役であるFCボンダーは、残り4%で構成される「その他」部門に組み込まれているが、このFCボンダーが同社の隠れた高シェア製品となっている。
もともと、同社のFCボンダーは自社の電子部品・モジュールを製造する際に用いられる「社内設備」として開発されてきた。歴史は古く、内製FCボンダーは20年以上前から社内の生産設備として同社の組立ラインで活躍してきた。
外販は2000年からスタートしている。転機は同社が開催したプライベートショーだ。社内生産技術の1つとして、内製FCボンダーなどを展示したところ、来場者から是非外販を行って欲しいという要望が多く、外部企業への販売を本格的に開始することになった。
18年度出荷台数は従来の2倍に
同社のFCボンダーは、超音波接合をベースにLEDや各種センサー、TCXO、SAWフィルター、光デバイスなど幅広い分野で納入実績がある。18年度は従来のLEDおよびセンサー・高周波フィルター用途に加え、ディスプレードライバーIC(DDIC)やマイクロLEDなど用途拡大が進んでおり、出荷台数は従来の2倍近くになる見通しだ。
要因の1つとして同社が挙げているのがSAWフィルター。スマートフォンで5G規格の導入が進めば、スマホ1台あたりに搭載される高周波フィルターの搭載員数は2倍に増えるとみており、装置需要拡大につながっている。
また、LED分野では車載ヘッドランプ用途でFCボンダーの引き合いが増えている。LEDは通常、ワイヤーボンディングが主流だが、ヘッドランプ用途ではFC実装が求められている。
マイクロLEDも大きな事業機会
今後はマイクロLEDも大きな事業機会として捉える。マイクロLEDでは、チップをTFT基板上に実装するピック&プレース工程に大きな改善の余地が残されており、ボンダーメーカーが顧客に様々な技術提案を行っている。同社でも台湾・中国企業を中心にソリューション開発を進めており、来期以降、本格的に業績貢献を果たしてくると期待を寄せる。
DDICも新たな用途開拓先として位置づけている。DDICは従来、別プロセスを用いた実装がメーンであったが、コストダウンやファインピッチ要求に伴い、現材料を使わない実装ニーズが高まっていた。これに対し、同社では特殊な超音波接合による実装方式を各社に提案しており、強い手応えをつかんでいる。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳