これまで中古品のリユースといえば「ヤフオク!」が長らく業界のリーダーという認識は多くの人が持っていると思う。以下に述べるように取扱高などを見ても「ヤフオク!」の方が大きい。しかし、そこにスマホを軸とした「メルカリ」のユーザーの利用頻度が上がり、「メルカリ」の存在感が増してきている。決算説明会資料をもとに両社の現在地を確認してみたい。

「ヤフオク!」の規模はどのくらいか

ヤフーは2018年7月27日に2019年3月期Q1決算を発表しているが、その決算説明会資料の中で2017年度(2018年3月期)の「ヤフオク!」の取扱高を約8800億円としている。

ヤフーの中でeコマースとして「ヤフオク!」以外に、「ショッピング事業」が約6300億円、アスクルBtoBが約2300億円、その他が約600億円ということを考えれば「ヤフオク!」の取扱高の規模の大きさがすぐにお分りであろう。

メルカリのグロス流通総額はどのくらいか

2018年8月9日にメルカリは2018年6月期の決算を発表しているが、その中で同決算期のGMV(Gross Merchandise Value, グロス流通総額)が日本では3468億円、グローバルで212百万ドルつぃています(尚、メルカリのGMVはキャンセル等を考慮後の取引高の合計で、「メルカリ カウル」、「メルカリ メゾンズ」を経由した購入を含む)。

GMVは「ヤフオク!」にはまだ及ばないものの、ベンチャー企業としてここまでの規模にまで成長していることには驚きでだ。スマホをきっかけにしているという背景だけでなく、ユーザインターフェースや認知度を高めることなどの工夫がむずんだ結果といえよう。

メルカリの損益状況はどうか

とはいえ、メルカリの業績は現在、海外を含めて投資フェーズであることもあり、収益は一見すると見栄えは良くない。

2018年6月期の売上高は358億円で対前年度比+62%増、営業損失が44億円(前年度28億円の営業損失)、親会社株主に帰属する当期純損失が70億円(42億円の当期純損失)となるなど、売上高は伸びるものの、損失が拡大している状況だ。

ただ、当期純損失があるものの、同社は上場したばかりで、純資産は544億円あり、現在の当期純損失が財務内容にいますぐ悪影響を及ぼすわけではない。

メルカリは上場で勝負できる体制に

メルカリのキャッシュ・フローも簡単に見ておこう。

2018年6月期は、営業活動によるキャッシュ・フローが税金等調整前当期純損失の▲49億円を中心に▲34億円(▲はキャッシュ・アウト)。また、投資活動によるキャッシュ・フローが投資有価証券の取得による支出や有形固定資産の取得による支出を中心に▲19億円。営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合計すると▲54億円。

このキャッシュ・アウトをファイナンスする形で、財務活動によるキャッシュ・フローでは株式発行による収入で570億円、長期借入による収入で160億円を中心に財務活動で636億円のキャッシュ・インとなっている。当面キャッシュアウトが続いても財務としては十分に勝負ができる体制となっている。

両社の競争領域は決済に

さて、リユース市場で競合環境にある両社であるが、両者ともに次の競争領域である「決済」にフォーカスが移りつつある。

ヤフーはソフトバンクと共同でJVであるPayPayを設立し、ソフトバンク・ビジョン・ファンドで出資をしているPaytm Inc.が技術提供する座組を作り、スマートフォン決済サービスを提供することを発表している。

また、メルカリは「メルペイ」を中心に今後メルカリエコシステムを構築していく予定だ。

決済は国内では既に様々な方法があるが、フィンテックでも決済は「1丁目1番地」でもある大きなテーマである。

現在求められているのは、単に便利な決算手段というわけではなく、銀行口座と決済をどのように「シームレス」に結び付けていけるか、またその他の金融資産にどのようにシフトさせていけるかというのが熱量が高い領域である。

同テーマ及び領域に関心があるのは2社だけではない。LINEなども同領域には今後、現在発表されていることも含めて様々な展開をしてくるであろう。両者ともにリユース市場に事業基盤としての接点を持ちながらどのような金融事業へと展開ができるのか注目しておくべきであろう。

泉田 良輔