この季節の風物詩「夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)」ですが、今年は第100回という記念すべき大会。暑い中、全力でプレーをする選手たちを観ていると、元気をもらえますよね。

ですが、今年はあまりにも暑すぎるせいか、熱中症で倒れる選手・観客が多く出ているほか、8月10日の試合では、球審も軽い熱中症で両足がけいれんする症状になり、急遽、別の審判が代役を務めるなどのハプニングがありました。

実際に、甲子園球場のマウンドでの体感温度は40度を超えると言われており、こういった状況の中で、世間では開催球場の変更や大会自体の中止などを求める声もあります。ですが当の選手たちは、これとは少し異なった意見を持っているようなのです。

「ドーム球場に変更すべき」など世間の意見

真夏の甲子園開催に関するさまざまな提案のうち、よくいわれる意見が「ドーム球場での開催」です。激しく照りつける太陽の光を浴びずに済み、さらに空調設備も整っているため、熱中症になるリスクを大きく低下させることが可能です。

また、雨天中止を回避できることも大きな魅力です。多くの出場校は全校応援をするため、試合日が一日順延するだけで、かなりの宿泊費用が追加でかかってしまいます。ドーム開催は、選手だけでなく参加校にも優しいといえます。

もう1つ、よく耳にする意見が、「開催時期の変更」です。問題は「暑さ」なので、球場を変えなくても、時期を早める、もしくは遅らせることで対応しようということです。夏の甲子園に対しては、甲子園球場で開催するからこそ意味があると考える人たちも一定数おり、そういった意見にも対応できるかもしれません。

球児たちは「大人の事情」の犠牲者!?

ついでに触れておくと、こうした提案と同時に、日本高等学校野球連盟(高野連)に対する批判だけでなく、主催の朝日新聞に対しても、たとえば「今年の西東京大会決勝での熱戦の様子を克明に報じたのに、その試合終了後、154球を投げたピッチャーが熱中症で倒れて救急搬送されたことには1行も触れていない」「販促に重要なイベントなのはわかるが、報道機関としてどうなのか」「球児たちは無視で、大人の事情しか考えていない」といった批判がされています。

暑さ以外にも、エースピッチャーが1人で何百球も投げさせられる状況を「選手虐待」と呼ぶ人さえいます。また、PL学園時代に甲子園で20勝を挙げ、巨人でもエースとして活躍した桑田真澄さんも、スポーツ報知での対談で「球数制限を導入すべき」と語ったことが話題を集めました。

当の選手たちの意見は……

上記のような真夏の甲子園大会開催へのさまざまな意見がある中で、実際にプレーをする選手たち自身はどのように考えているのでしょうか?

東京スポーツが出場選手に対して行った調査によると、50人中47人の選手が「甲子園でやるべき」と答え、残りの3人は「球場にはこだわらない」と答えました。なんと「ドーム球場に変更するべき」という意見を持つ選手は1人もいなかったのです。

・小さいころからの憧れなので、甲子園じゃないと意味がない
・冷房が効いたドーム球場で試合をしてもありがたみがない

など、甲子園球場で試合をすることに強いこだわりを持つ選手もいました。

開催時期変更の壁

「選手たちが甲子園で試合をしたいと望むなら、せめて時期だけでも変更させてあげたい」と考える人も多くいるかもしれませんが、簡単にはいかない事情があります。

それが「受験勉強」です。もし、甲子園開催を秋に後ろ倒しすると、選手たち、そして全校応援をしにくる野球部以外の生徒の受験勉強に大きな支障が出てしまいます。

「それでは前倒しにして6月ごろに開催してはどうか」という意見も出るでしょう。ですが、そうしてしまうと、今度は春に行われる地方大会と甲子園予選との間の期間がかなり短くなってしまうことが予想されます。

何よりも、選手のことを一番に考えた対策を

このように、世論と選手たちの意見にも食い違いがあり、また開催時期などに関する事情などもあり、一概に「ドーム球場への変更が一番の解決策」ともいえないのが難しいところです。

ナイター開催を含め、試合時間の変更など、今後は新たな視点での対策が必要となってくるのかもしれません。何よりも、選手のことを一番に考えた対策が望まれます。

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