厚生労働省は令和6年11月5日に、今後、若い世代が年金についてイメージしやすくなるように「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方について」より、多様なライフスタイルに合わせた年金のモデルケースを発表しました。
筆者はFPとしてお金に関するさまざまな相談を受けていますが、実際に若い世代の方たちは、将来の年金額をイメージしにくいようです。
そのため、「老後への生活について具体的な想像しにくい」とおっしゃる方が多い印象です。
将来の資金計画を考える上でも、実際の生活バランスを知ることが最初の一歩となります。
しかし、身近に高齢者の方がいらっしゃらないと、老後の生活について把握するのはなかなか難しい部分もあるかと思います。
実際に、高齢者の方の懐事情はどのようになっているのでしょうか。
今回の記事では、現役シニア世代のお財布事情について確認していきます。将来に向けて、家計の収支バランスを考えていく上での参考にしてみてください。
※金額等は執筆時点での情報にもとづいています。
1. 年金世帯「65歳以上の無職二人以上世帯」の平均貯蓄額は?
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、65歳以上で無職の二人以上世帯の平均貯蓄額は2504万円でした。
2018年から2023年までの過去5年間の、平均貯蓄額の推移は以下のとおりです。
- 2018年:2233万円
- 2019年:2218万円
- 2020年:2292万円
- 2021年:2342万円
- 2022年:2359万円
- 2023年:2504万円
2018年から2020年までは2200万円台だった貯蓄額が、2021年から2300万円台に上昇し、2023年には2500万円台に達しました。
この貯蓄額の増加にはいくつかの要因が考えられますが、主に以下の3つが挙げられます。
- 年金不安
- 長寿化
- 金融市場の影響
少子高齢化が進行する中で、年金制度への不安が高まっており、それに備えて貯蓄を増やす傾向が強まっています。
また、長寿化が進んだことで、老後資金としての貯蓄の重要性がさらに高まっているとも言えます。
さらに、資産運用や投資に積極的な世帯では、金融市場の影響を受けて資産価値が増加し、その結果として貯蓄額が増えている可能性もあります。
ここまでシニア無職世帯の貯蓄状況を見てきましたが、次章では65歳以上の「勤労世帯を含む」世帯の貯蓄状況についても詳しく見ていきましょう。