マクドナルドといえば、ハンバーガーの好みは人それぞれだが、誰もが同社のハンバーガーを一度は食べたことがあるのではないだろうか。日本でマクドナルドを運営する日本マクドナルドの業績は不祥事を背景として悪化し以降、現在は大きく改善をしている。今回は最新の決算短信やそのほかの開示資料などをもとに振り返ってみよう。
好決算だった2018年12月Q2決算
2018年12月期Q2累計決算は、売上高は対前年同期比+10%増、営業利益は同+42%増、親会社株主に帰属する四半期純利益は同+26%増と、増収及び大幅増益となった。
店舗数に関しては、直営店舗及びフランチャイズ店舗の合計で2901店。うち、直営店舗が925店、フランチャイズ店舗が1976店となっている。2017年12月末時点との比較では直営店がネットで1店舗減、フランチャイズが4店舗増となっている。
既存店売上高は引き続き堅調
既存店売上高に関しては、当決算のQ2累計で対前年同期比で+9.3%増、客数が+4.7%増、客単価が+4.4%増と、客数と客単価のいずれもが大きく伸びており堅調だ。
また、月次ベースでも既存店を見ていこう。1月以降の既存店売上高及びその構成要因である客数と客単価は以下の通りだ。
|
売上高 |
客数 |
客単価 |
2018年1月 |
13.4% |
4.2% |
8.8% |
2018年2月 |
5.2% |
3.8% |
1.3% |
2018年3月 |
10.0% |
3.6% |
6.2% |
2018年4月 |
7.4% |
4.9% |
2.4% |
2018年5月 |
9.6% |
5.9% |
3.5% |
2018年6月 |
9.8% |
5.4% |
4.2% |
2018年7月 |
3.4% |
-2.3% |
5.8% |
7月の客数がマイナスとなったことを除けば、いずれもプラス成長を続けてる。
また、7月の客数のマイナスについて会社は以下のようにコメントをしている。
既存店客数は-2.3%となりましたが、これは昨年と比較して土曜日が1日少なかったことに加え、昨年実施した強力なキャンペーンによる反動によるものであり、ビジネスは着実に成長を続けています。
日本マクドナルドの今後の注目点
過去の不祥事のイメージが払しょくされつつあり、業績は大きく改善している。同社マネジメントもここまでの施策とその結果に手ごたえを感じているのではないであろうか。
では、同社を見る上で今後注目すべき点は何であろうか。
7月は既存店における客数がマイナスとなってしまったが、引き続き客数の増加を実現できるかどうかに注目が集まろう。現在小売り及び外食産業において客数が対前年同月比で安定的にプラス成長をしている企業はそう多くはない。
また、客単価の上昇をどの程度まで顧客が許容してくれるかに焦点は移ろう。商品施策(付加価値化)を進めるとともに、プロダクトミックを改善させるのは常套手段であるが、消費者が同社ブランド商品に対して許容できる価格帯はある。今後は、業績改善後の同社を考える際にはこれらのポイントに注目をしていきたい。
泉田 良輔
執筆者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役、株式会社モニクルフィナンシャル取締役も務める。東京工業大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2024年8月27日