安全運転の人には、カーシェアリングの保険料を割り引き

あいおいニッセイ同和損害保険は2018年7月25日、パーク24が展開するカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」において、安全走行した距離に応じて、自動車保険の新規契約時の保険料を優遇する制度を2019年1月から始めると発表しました。

具体的には、パーク24が蓄積したタイムズカープラス車両の走行データをもとに、タイムズカープラス利用時に事故を起こさずに走行した距離を「あんぜん走行距離」として積算し、新規で自動車保険を契約する際の保険料を最大20%割り引くというものです。

あいおいニッセイ同和損保は2018年1月、トヨタ自動車と共同で安全運転の度合いに応じて保険料を割り引く保険を国内で初めて開発し、販売している実績があります。

同保険では、トヨタが展開する、インターネットと接続し走行データが取得できるナビを搭載したコネクティッドカーの一部を対象に、取得した走行データに基づき、毎月の安全運転の度合いを保険料に反映します。

それに基づき、基本保険料と運転分保険料からなるトータル保険料のうち、最大で運転分保険料の80%を割引くというものです。「運転挙動反映型テレマティクス自動車保険」と呼ばれる保険です。

保険をはじめさまざまな分野で「テレマティクス」化が進む

「テレマティクス」とは、自動車などが外部と通信し情報をやりとりすることです。乗用車だけでなく、最近では、トラック、油圧ショベルやブルドーザーなどの建機、フォークリフトなどでもテレマティクス機能を備えた車両が増えています。

産業用車両では、各地での車両の稼働状況などのデータを収集し分析することで、部品交換などのメンテナンスを的確に行うことができるようになります。これにより、故障を予防することもできるわけです。テレマティクスにより、車両のリース料金などを見直そうとしてるリース会社もあります。

このほか、テレマティクスは、安全運転のサポートにも使われています。オリックス自動車が2017年2月から提供している「Ever Drive」は、車両に取り付ける専用デバイスでドライバーの運転状況をリアルタイムに把握し、「速度超過」「急加速」「急ブレーキ」「長時間運転」などが検知された場合、家族などにメールで通知するサービスです。

高齢運転者の事故が増えている中、この防止に貢献するものとして、問い合わせが増えているそうです。

今後はデータを持つ企業が競争力を発揮するようになる

こうしたテクノロジーの進化で最も注目されるのが自動運転車でしょう。完全自動化になるにはもう少し時間がかかりそうですが、自動ブレーキなどなどの機能を搭載した車両は珍しくなくなっています。実際に、安全性能の高い車が増えていることで事故率も下がっています。これを受けて、ここ数年は自動車保険の保険料が引き下げられています。

今後、自動化が進むと、保険の内容はどう変わっていくのでしょうか。まず議論が活発になっているのが、運転者、車の所有者などの運行供用者、自動車メーカーなどの製造者のうち、誰が賠償責任を負うのかという問題です。

ただし、自動運転は「レベル1」から「レベル5」までレベル分けされています。完全に自動化された「レベル5」の自動車なら、運転手の対応は求められません。つまり、レベルに応じて、それぞれの責任の度合いも異なるため一概には決められません。

これらの課題の解決には、やはりデータが不可欠になります。従来のように「○歳以上でゴールド免許」といった情報だけでは、保険料率の算定はできません。

その点ではやはり、データを持つ企業の参加が不可欠です。自動車保険に限らず、エネルギーなどの社会インフラのほか、金融、医療、教育などの分野でも、今後はデータを持っている企業が新たな業態に参入してくる可能性があります。ビッグデータを持つ企業、それを分析し活用できる企業がますます競争力を発揮するようになるでしょう。

上山 光一