サマータイムよりフレックスタイムを!

厚生労働省が率先してはどうか

サマータイムよりフレックスタイムを導入すべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

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東京五輪の暑さ対策として、サマータイムを導入しよう、という話があるようですが、賛成できません。東京五輪の暑さ対策だけであれば、試合の開始時間を繰り上げればよいので、五輪以外の人々まで巻き込む必要はありません。

むしろ、「一般のサラリーマンは9時に出社して、五輪関係者だけが7時に出勤する」ほうが、「一般のサラリーマンも五輪関係者もサマータイムの9時、すなわち現在の7時に出勤する」よりも良いでしょう。交通渋滞もありませんから。

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サマータイムのメリットは余暇時間の増大?

本来のサマータイムのメリットは、「明るいうちに仕事が終わって余暇を楽しむことができる」「朝の涼しい時間に仕事をした方が効率的」といったことでしょうか。しかし、朝型の人と夜型の人がいるでしょうし、そのあたりは人それぞれでしょうね。

そんなことなら、早く来て早く帰りたい人も、遅く来て遅く帰りたい人も、それぞれが自由に働ける「フレックスタイム」を導入した方が良いでしょう。「9時から3時までをコアタイムとして、それを含む9時間(うち1時間は休憩)を各自が勤務時間と決めること」とすれば良いのです。

朝型の人は朝、夜型の人は夜、仕事を頑張れば良いので、皆が同じ時間に勤務する必要はないでしょう。皆がフレックスタイムになれば、通勤ラッシュも緩和されるでしょうし、飲みに行く時間がそれぞれ異なれば、客も待たされず、飲み屋も長い時間営業できて助かるはずです。

上司が遅番だったりすると、早番の部下が上司より先に帰りづらくて「つきあい残業」が増えるということはあるかもしれませんが、サマータイムにしても「まだ明るいのに、もう帰るのか?」という上司が増えるでしょうから、同じことですね(笑)。

冗談はさておき、サマータイムは「時差ボケ」を招いて睡眠を阻害する、という反対意見が医学の世界では出ていて、実際に欧州委員会が夏時間を廃止すべきか否かを検討する、といった報道もなされています。

官公庁から率先垂範を

まずは、官公庁からフレックスタイムを導入し、民間にも導入を呼びかけましょう。働き方改革は、旗振り役の厚生労働省の職員が大残業をしていて示しがついていませんから、今度こそ旗振り役が率先垂範してほしいものです。

ちなみに、工場のベルトコンベアーで働く労働者は、フレックスタイムに向きませんが、そういう職場は、職場ごとに相談して始業時間を決めれば良いのでしょうね。

システム関係に過重な負担かも

筆者はシステムには全く詳しくありませんが、SNS上ではシステム関係者の悲鳴が随所に見られます。たしかに、およそ全て、時間が関係しているプログラムは修正が必要でしょうから、大変な作業量なのだと思います。修正そのものよりも、修正漏れがないことのチェックの方が大変なのかもしれません。

不況期の失業対策であればまだしも、これだけ労働力不足の時に、しかも貴重なコンピューター関係の技術者を大量に動員するに値するメリットがあるプロジェクトとは思われません。

ユーザーサイドとしても、2000年問題(00年という記載を見たコンピューターが1900年と2000年を間違える可能性を心配した)で大騒ぎしたことが記憶に新しいですので、不安です。

「米国では実施しているのだから」とは言えない事情あり

「米国では実施しているのだから、日本でも実施しよう」という考え方は、一般論としては可能なのでしょうが、本件には当てはまらないと思います。それは、米国でサマータイムが本格的に導入されたのが第2次世界大戦中だったからです。

第一に、当時はコンピューターが発達していなかったので、現存する全米のコンピュータープログラムはサマータイム導入後に作成されたものです。したがって当初からサマータイムを前提として作成されています。既存の膨大なプログラムを全部チェックして修正しなければならない日本とは事情が異なります。

今ひとつ、当時の米国は工場労働者の比率が高く、フレックスタイムの導入が難しかったのでしょうが、今の日本では工場労働者の比率が低いので、彼らよりもオフィスワーカーの事情を優先してフレックスタイムを検討することができるのです。

もしかすると、米国もサマータイムからフレックスタイムに移行したいと思っている人が多いかもしれませんよ。でも、システム担当者が「今から全部のプログラムを修正するのは嫌だから、サマータイムを続けてくれ」と頼んでいたりして(笑)。

五輪の混雑対策は休暇と価格メカニズムの活用で

余談ですが、五輪期間中の東京は、大変な混雑が予想されます。宅配便の利用を控えるように要請が出ているという話も聞きます。

混雑対策として最も有効なのは、皆が休暇をとって東京を離れることです。学生の夏休みを前倒しにすることはもちろんですが、五輪期間中になるべく多くのサラリーマンが休暇をとりましょう。まずは公務員が率先して五輪期間中に休暇をとり、民間企業のサラリーマンにも五輪期間中の休暇取得を呼びかけましょう。

テレワークなどの活用も、試みましょう。これは、定着すれば五輪以降も働き方改革として重要な改善になりますから。

ちなみに、少数説ながら筆者が推奨しているのは、五輪税の導入です。五輪期間中の首都高速道路、都内の鉄道、都内発着の宅配便、都内のガソリンスタンドに限って、高額の税金を課すのです。不急不要の高速道路利用、鉄道利用、宅配便利用は激減するでしょう。不急不要でない利用者は、高い税金を徴収されてしまいますが、それは仕方のないことです。

集まった税金は、五輪運営ボランティアへの謝礼に用いましょう。大会期間中、大勢のボランティアが動員されて無償で働いてくれるということなので、少しでも彼らに報いることができるのならば、税金を払う際の気分が少しだけ明るくなるかもしれませんから。

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塚崎 公義

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塚崎 公義

1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ。
現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と関係なく個人として行なっているため、現職は経済評論家と表記したものである。
(近著)
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(雑誌寄稿等)
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