5. 今からでも遅くない「老後資金づくりをはじめる際のポイント」
本章では、現役世代が将来の年金生活に備えて「老後資金を構築する際のポイント」を解説します。
金融庁の「家計管理とライフプランニング」によると、60歳を過ぎると収入が減少する傾向にあります。
60歳代に入ると年金を受給する方が増えてきますが、前述の通り、年金だけでは老後生活を支えるのは難しいでしょう。
これまでの貯蓄を取り崩しながら生活する場合でも、物価の上昇により家計に大きな負担がかかりやすくなっています。
また、低金利の貯蓄だけで資産を運用していると、物価上昇によって資産が目減りしてしまう可能性も考えられます。
上記を背景に、老後に向けてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用して資産形成を始める方が増えています。
60歳を過ぎると現役時代に比べて収入が減る可能性が高いため、日本年金機構から毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を活用して年金の見込み額を確認し、老後の生活費が不足しそうな場合は、今のうちから少しずつ準備しておくと良いでしょう。
ただし、NISAやiDeCoは元本保証がないため、老後資金を形成する際は、生活防衛資金ではなく、余裕のある資金を活用することをおすすめします。
6. FPからのアドバイス 年金だけに頼らない老後のために今からできること
年金だけに頼らない老後資金の確保は現在の日本社会においてますます重要となっています。少子高齢化や経済の不確実性により将来の年金制度に対する信頼が揺らいでいるためです。
ここからはFP としてお客様によく聞かれる老後資金を確保するための具体的な対応策をいくつか紹介します。
6.1 個人年金保険の活用
公的年金だけでは不十分な場合、個人年金保険を活用することも考えられます。
年金収入だけで老後の収入が少ない場合はぜひ活用を検討してみてください。計画的に積立て将来の安定した収入源を確保することが可能です。
6.2 積立NISAやiDeCoの活用
NISAやiDeCoは、税制優遇を受けながら老後資金を効率的に増やすための魅力的な制度です。今年からNISAの非課税投資枠が増額されました。
また、2024年12月よりiDeCoについても確定給付型の他制度を併用する場合(公務員を含む)のiDeCoの拠出限度額が1万2000円から2万円に引上げられます。
こうした投資の追い風を利用することで長期的な資産形成が期待できます。
6.3 生活費の見直しと節約
現役時代から生活費を見直し、無駄を省くことで将来の資金不足に備えることができます。特に固定費の削減は大きな効果があります。削減できた固定費を投資に回す余裕もうまれるでしょう。
株式、投資信託、債券など多様な資産運用方法を学び、実践することも重要です。リスクを分散しながら資産運用を行うことで、老後の経済的な安定を目指せるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「年金振込通知書」
- 厚生労働省・日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」
- 日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金に関するお問い合わせ先」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)は、いつ頃送られますか。」
- 金融庁「家計管理とライフプランニング」
立野 力