とはいえ、「手頃な価格でステーキを提供する」という理念は貫かれています。
昨年アマゾンに買収され、取り扱う商品の価格もぐっと手頃となったホールフーズでも標準的なステーキ用の牛肉はポンド(16オンス)当たり25ドル前後ですし、高級な部位となれば30ドルを超えることも珍しくありません。
対して、いきなり!ステーキでは部位や大きさによっては20ドル以下でも十分に楽しめます。スーパーで買って自宅で焼く手間や家庭では難しいとされる絶妙な焼き具合で提供されることなどを踏まえると、文字通りお手頃な値段でステーキを堪能することができます。
ちなみに、ピータールーガーといった日本人にも知られるステーキ店に行った場合、ワインやデザートを合わせると1人100ドルくらいが相場となりますし、そもそも1人で行くところではありません。
飲食業での原価率は3割程度といわれていますが、いきなり!ステーキの原価率は5割を超えているとのこと。客回転の速さが売りですが、ここニューヨークでは「立ち食い」は成り立ちません。
ただ、ステーキにワインは付き物。そこで、着席して食べてもらう代わりに目を付けたのが利益率の高いワインでした。また、米国でも日本酒の人気が意外と高いことから、現在はステーキに合うお酒を厳選して提供することにも力を入れています。
日本に比べると回転率が落ちる分、日本酒の品揃えを充実させることで利益を補い、低価格を実現しているようです。
人気の秘密にはアジア系ミレ二アル世代の支持も
ニューヨークでいきなり!ステーキを利用して気づくのは、アジア人比率の高さです。日本人が利用しているのだから当たり前と思われるかもしれませんが、そうではなく中国人や韓国人が多いのです。
これは成功している日系レストランの特徴の1つでもあり、たとえば大戸屋がよい例です。大戸屋ではランチでも20ドルはしますので、物価の高いニューヨークでも高い方の部類に入ります。
決して安くはない大戸屋ですが、行列ができるほどの大人気となっています。その人気を支えているのがアジア系のミレ二アル世代(20〜30代)。大戸屋は大衆店でありながらも上品さを備えた店構えとなっていますが、これはニューヨークでラーメンブームの火付け役となった一風堂にも言えることです。
一風堂のラーメンは1杯が約2000円と日本人の感覚からするとちょっと高すぎると感じるかもしれませんが、大戸屋や一風堂は食事をエンターテインメントとして楽しめる「場」を提供してもいるのです。
日本でもかつてカジュアルな「イタ飯」が若者を中心にブームとなりましたが、ニューヨークでの大戸屋や一風堂の立ち位置はこれに近いといえるでしょう。「日系レストラン」はおしゃれな若者が集う場としてのブランド力を強めているのです。