3. 58.3%の高齢者世帯が「年金だけで生活できない」

では老後、公的年金・恩給のみの収入で生活できる世帯はどれくらいあるのでしょうか。

2024年7月5日、厚生労働省より公表された「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」を見てみます。

【写真3枚目/全3枚】公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合

公的年金・恩給の総所得に占める割合別世帯数の構成割合

出所:厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」

公的年金・恩給のみの収入で生活できる世帯は、41.7%であることが明らかになりました。

高齢者世帯の約6割は、年金以外の収入で生活費を補っていることがわかります。リタイア後も働いて収入を得る世帯や、あるいは現役時代に準備していた私的年金を受け取っている世帯もあると考えられます。

たしかに、定年年齢や再雇用を取り巻く制度改正が次々と進められるなど、定年が近年は高齢者が働きやすい環境が整いつつあります。しかし、体力面や健康面を考慮すると、労働収入を軸に置くのはリスクといえるでしょう。

こうした現シニア世代の暮らしぶりを参考にして、現役世代の人たちは老後に向けて年金収入を補填するための資金を確保していく必要があります。

4. 給与収入があるいまだからこそ老後に向けた対策を

本記事では、シニア世代の実際の年金受給額を確認してきました。

約6割の方が年金以外の収入で生活費を補っているという現実から考えても、老後年金だけに頼って生活していくのは心もとないでしょう。

老後というとものすごく先のことと感じられる方もいると思いますが、同時に注意すべき部分は健康リスクです。

現在は健康で安定的に給与収入があるという方でも、老後を迎える前にケガや病気などで働けなくなるリスクもあります。

その場合、貯めていけるはずだった資金が治療費や生活費に消えてしまったり、想定していた退職金の金額を受け取れないなどということも考えられます。

老後に向けた準備をするのに早すぎるということはありませんので、給与収入があるうちにコツコツ資金準備を始めていきたいですね。

いまではNISAやiDeCoなど節税効果を持ちながら資産運用をする手段もあります。

長い時間をかけて積立を続ければリスクを低減することができ、積み立てたお金に働いてもらうことで効率よく、物価上昇に負けない資産作りができるかもしれません。

自分に合った手段で今から準備を始め、安心して老後を迎えましょう。

参考資料

矢武 ひかる