世界でも特異? 孤独な日本人が真面目に心配すべきこととは

「きずな貯金」のすすめ

孤独と健康の関係とは

昨夏のことですが、『孤独は喫煙と同じくらい健康リスクがあるとの研究結果』という記事がありました。孤独と喫煙が同じくらい健康に悪いなんて、驚きですよね。でも、これは2010年の研究で、すでに広く知られているものなのです。2014年発行の石川善樹氏の著書にもこの研究は詳しく掲載され、次のように述べられています。

「(この研究は)2010年に行われたアメリカのブリガム・ヤング大学のJ. ホルト-ランスタッドという研究者によるもの。20世紀と21世紀に行われた148の研究(総勢30万人)をメタアナリシス(複数の研究結果を統合)した結果、『タバコを吸わない』『お酒を飲みすぎない』『運動をする』『太り過ぎない』といった項目よりも、『つながり』があることの方が寿命を長くする影響力が高い、という結論」

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出所:『友だちの数で寿命はきまる〜人との「つながり」が最高の健康法〜』(石川善樹著、2014年、マガジンハウス)

「社会的孤立」が健康に大きく影響し、「つながり」があることが寿命を長くするというのは、とても衝撃的な研究結果だと思います。では、我々日本人の社会的孤立や、つながりの度合いはどうなのでしょうか。様々な調査・研究がありますが、代表的なものを2つ紹介します。

日本人の孤独の実情とは

まず1つ目は、内閣府による「平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」。これは、日本・米国・ドイツ・スウェーデンの高齢者を対象に比較調査を行ったものです(調査対象は各国とも75〜79歳)。

その結果を見ると、たとえば「親しい友人の有無」についての質問で、「同性・異性いずれもいない」と答えた人の割合は、スウェーデン6.9%、ドイツ10.2%、米国13.5%と比べ、日本は35.7%とダントツに多くなっています。逆に、「同居の家族以外に頼れる人」として「友人」をあげた人の割合は、ドイツ48.9%、米国40.5%、スウェーデン37.4%であるのに対し、日本は15.8%という低さです。

また、「健康のために地域の活動に参加する人」の割合は、ドイツ43.1%、スウェーデン42.7%、米国34.4%であるのに対し、日本は21.1%という結果でした。

参照:ILC-Japan・国際長寿センター日本発行「われらニッポンの75歳」(元データ:内閣府)

もちろん、西欧諸国とは家族構成も違うでしょう。地域の活動に出なくても、親しい友人がいなくても、同居・別居の家族内でのつながりが強く、日本の高齢者はそこでのつながりを重視しているのかもしれません。

ただ、これから高齢独居世帯、老老世帯などが増加することを考えると心配な面も大きいですよね。だからこそ、今後はもっと地域のつながりが尊重されてもいいのかもしれません。

2つ目の調査は、少し古いですがOECD(経済協力開発機構)の「Society at a Glance: OECD Social Indicators – 2005 edition」によるものです。

それによると、「友人、同僚、その他宗教・スポーツ・文化グループの人と全く、あるいはめったに付き合わないと答えた比率」で、日本は15.3%で20カ国中の第1位でした(2位はメキシコの14.1%、3位はチェコの10.0%)。こちらは年齢限定なしの調査ですが、やはり社会的なつながりが薄いことが見て取れる結果です。

参照:「社会実情データ図録・社会的孤立の状況」(元データ:OECD)

もし、社会的孤立が喫煙・肥満・過度な飲酒より健康に悪いのならば、この結果は日本人が真摯に受け止めるべきものなのかもしれません。

「きずな貯金」とは

しかし、健康に影響する・しないにかかわらず、孤独な人が多い社会というのは、それ自体が健全とは言えないのではないかとも思えてきます。では、我々はどうすればいいのでしょう。

実は、この問題を直視し、改善に向けた実践をされている方々も日本には多くおられます。地域の「つながり・きずな」を重視し、それを「貯金」のように貯めていこう、つまり地域に「きずな貯金」を貯めていこうという取り組みは、すでに日本でも各所で行われているのです。

みなさんは「隣人祭り」を知っているでしょうか。そもそもは、フランスのアタナーズ・ペリファンさんが、地域で付き合いのない高齢者が孤独死していたことにショックを受け、「もう少し住民の間に触れ合いがあれば、悲劇は起こらなかったのではないか」と考えたことから始まりました。

祭りと言ってもさして大掛かりなものでもなく、地域の人たちが食べ物や飲み物を持ち寄って集い、食事をしながら語り合う、ただそれだけです。年に一度のこの祭りの習慣、いまやヨーロッパを中心に29カ国、800万人が参加するそうです。

詳細は『隣人祭り』(アタナーズ ペリファン著、南谷桂子著、ソトコト新書)に詳しく載っていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

そして、この流れは日本でも始まっています。 すでに「隣人祭りの事例」が日本各地にありますし、渋谷区では隣人祭りからヒントを得て「渋谷おとなりサンデー」というイベントが行われています。

その他にも、「都会に田舎を作る」と地域のきずなをつないでおられる世田谷区の「せたカフェ」や、墨田区で「喫茶ランドリー」というユニークなコミュニティの場が出現しているなどの例もあります。

以前、私のブログで取り上げた、地域包括ケアシステムを運営する「コミュニティデザインの鉄人、小泉圭司さん」、「認知症でも自宅で独居できている3つの秘訣」という事例も、地域の「きずな貯金」を貯める活動です。

もちろん、「急にそんなことできない」と思う方は多いと思います。でも、もし近所の人との関係が疎遠なのであれば、まずは勇気を出して笑顔で挨拶してみてはいかがでしょうか。もし、すでに近所の人と挨拶程度はできるけどそれほど深い付き合いはないというなら、旅行に行った時のお土産を渡してみてもいいのではないでしょうか。

お土産を持っていったら、そのうちお返しがもらえるかもしれません(笑)。そんなやり取りをしているうちに仲良くなってきたら、勇気を出して「ご近所で隣人祭りしてみませんか?」と切り出してみたらどうでしょう。近くの居酒屋で飲むだけでもいいのです。とはいえ、なかなか一朝一夕には行かないと思いますが...。

ただ、地域の「きずな貯金」が貯まっていくことで社会的孤立が減り、ご近所の高齢者の、そしてあなたの健康が保たれるなら、その労は決して高いコストではないような気がします。今日から一歩踏み出してみませんか?

筆者の共著書『あおいけあ流 介護の世界』では、地域住民を巻き込みながら高齢者の自立支援を行っている事例が紹介されている。

日本内科学会認定内科医 森田洋之

参考記事

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森田 洋之

1971年横浜生まれ、一橋大学経済学部卒後、宮崎医科大学医学部へ。内科研修終了後、財政破綻後の北海道夕張市・夕張市立診療所に勤務。同診療所所長を経て妻の実家の九州へ戻る。
2011年、東京大学大学院H-PAC千葉・夕張グループにて夕張市の医療環境変化について研究。2014年、TEDxKagoshima出演。同年、研究論文『夕張市の一人あたり高齢者診療費減少に対する要因分析』(社会保険旬報)発表。2015年、『破綻からの奇蹟〜いま夕張市民から学ぶこと〜』を出版(日本医学ジャーナリスト協会優秀賞受賞)
現在、南日本ヘルスリサーチラボ代表、日本内科学会認定内科医、日本プライマリ・ケア連合学会指導医、鹿児島県参与(地方創生担当)。森田洋之のブログは「note」をご覧ください。