3. 生活保護の条件「最低生活費」とは
生活保護の受給額は、最低生活費から収入を差し引いた金額となります。
「最低生活費」とは、生活扶助(特例加算や経過的加算を含む)、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、加算額の6つを足した金額です。
出産や葬祭などがあった際は、これらの扶助も加えた合計金額となります。
以下の例をもとに、最低生活費を計算してみましょう。
- 1級地に住む40歳の女性(小学生の子ども1人の母子家庭)
- 毎月持病で通院中(治療費5000円)
- 介護は受けていない
最低生活費=生活扶助(特例加算1000円含む)+住宅扶助+教育扶助+医療扶助+介護扶助+加算額
=(78889+1000)+53700+2600+5000+0+(18800+10190)
=17万179円
最低生活費は、合計17万179円でした。この金額から収入を引いた金額が、生活保護費として支給されます。
たとえば、上記の女性がパート収入で月10万円の収入を得ている場合、生活保護費として支給される金額は、差額の7万179円です。
もし収入が最低生活費を上回り自立した生活を営めるようになると、保護は打ち切られます。
では、生活保護を受けている人は、どれくらいいるのでしょうか。次章で解説します。
4. 生活保護の受給者数
厚生労働省の「被保護者調査」によれば、令和6年4月時点の生活保護受給者は、以下のとおりです。
- 被保護実人員数:201万1281人
- 被保護世帯数:164万7853世帯
保護停止中の人も含めた被保護者は200万人を上回る数となっています。令和6年7月1日時点の日本の人口が1億2396万人ですから、約1.6%の人が生活保護を受けているといえます。
保護の申請件数は2万796件で、前年同月に比べて5.9%増加しています。生活に困窮する人の割合は全国民のうちごくわずかですが、申請件数が増えているのは決してよい傾向とはいえないでしょう。
5. まとめにかえて
生活保護は、その人が健康かつ文化的な最低限度の生活を営めるよう支援する制度です。保護を受給するには、さまざまな資産の売却や、労働、年金制度・扶養制度の活用といった自助・共助努力が必要不可欠です。
それでも生活が苦しいときに初めて適用される公助制度が生活保護であり、私たちにとっては「最終手段」であると捉えておいたほうがよいでしょう。
一方で、生活保護の不正受給や受給者によるトラブルなど、生活保護には問題も数多くあるのが現状です。受給者自身のモラルが問われると同時に、適切な人に正しく扶助が行き渡るよう、今後も定期的な制度の見直しが必要でしょう。
参考資料
- 厚生労働省「生活保護制度」
- e-Gov法令検索「生活保護法」
- 厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)」
- 厚生労働省「令和6年度被保護者調査 結果の概要」
- 総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)2月確定値、2024年(令和6年)7月概算値)」
石上 ユウキ