2. 【親の介護】子どもがするのは当たり前?

次は、厚生労働省の2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況から、主な介護の担い手について見てみましょう。

2.1 「要介護者等」からみた「主な介護者」の続柄別構成割合

「要介護者等」からみた「主な介護者」の続柄別構成割合

 「要介護者等」からみた「主な介護者」の続柄別構成割合

出所:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅳ 介護の状況 1 要介護者等のいる世帯の状況

同居の主な介護者

  • 同居の配偶者:22.9%
  • 同居の子:16.2%
  • 同居の子の配偶者:5.4%
  • 同居の父母:0.1%
  • 同居のその他の親族:1.2%

別居の家族等

  • 別居の家族等:11.8%
  • 事業者:15.7%
  • その他:0.6%
  • 不詳:26.0%

「介護が必要となる人」と「主な介護者」との同居・別居の割合を見てみると「同居」が45.9%に。「同居の主な介護者」について、介護が必要となる人から見た関係は「配偶者」が22.9%で最多。ついで「子」が 16.2%となっています。

「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢階級別構成割合

出所:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅳ 介護の状況 1 要介護者等のいる世帯の状況

また、介護が必要な人と「同居の主な介護者」の年齢の組み合わせに目を向けてみると、60歳以上同士は77.1%、「65歳以上同士」は63.5%、「75歳以上同士」は35.7%。「老々介護」の割合は緩やかに上昇していることも分かります。

夫婦世帯であれば、もしどちらかが要介護となったとき、健康な方が介護の担い手となる傾向にあることは推測できそうですね。

3. まとめにかえて

高齢化が進む一方で、少子化や核家族化が進むこんにち。介護の担い手は確実に減少していきます。老老介護や遠距離介護を余儀なくされるケースが増えるのは必然的なことと言えるでしょう。

そのような中で、育児と介護を並行して行わねばならない「ダブルケアラー」や、仕事と介護を両立させる「ビジネスケアラー」、子どものうちから日常的に家族のケアを行わざるを得ない「ヤングケアラー」などの存在も明らかになってきました。

好むと好まざるとにかかわらず、家族の介護のために負荷を背負い心を砕く人たちの姿は、メディアなどでも報道される機会が増えました。

それぞれの家族構成や要介護者の状態によっても状況は違ってくるとは思いますが、やはり介護にかかる心身のストレスや金銭面での負担は決して少ないものではありません。

介護は先の見通しが立ちにくいという性質があります。育児や仕事などのように、先を見越したうえで期間を設定できるようなものとは異なります。

たとえ長丁場を覚悟していた場合でも、実際に介護の日々が重なってゆくことで家族を苦しめることもしばしばです。だからこそ、そのとき――介護が必要となったときを見据えて、事前に親子や家族で話し合いをして意思疎通しておくことが大切なのです。

4. 「親の心、子知らず」「子の心、親知らず」そんな介護生活にならないために

民法877条1項には、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と記されています。

まさにその通りに家族のケアや介護のために色々なことを犠牲にして頑張る方も多くいらっしゃいますが、24時間つきっきりで介護をすることだけが正義ではありません。介護のプロに頼るのも然るべき手段です。

親を介護施設へお願いしたことについて、良心の呵責に苛まれる必要はありません。ましてや外野の親族や他人が非難すべきことでもありません。

とはいえ、身内以外には面倒をみてもらいたくない、家族以外を自宅にあげたくないと考える人もいるでしょう。

お互いの意思疎通がとれており納得したうえで在宅介護や家族でのケアを選択するのはありですが、それぞれの負担になることは避けたいものです。

「親の心、子知らず」「子の心、親知らず」ではないか、それぞれ冷静になることが必要なのではないかと筆者は考えます。

参考資料

吉沢 良子