国税庁は2018年3月30日、平成28年度(2016年度)分の「会社標本調査」の結果を発表しました。調査結果を見ると、2016年度の交際費などの支出額は3兆6,270億円。前年度比で1,432億円増(4.1%増)で、2012年度以来5年連続増加しています。

ちなみにこの調査は、国内の法人企業について、資本金階級別や業種別にその実態を明らかにし、あわせて、租税収入の見積り、税制改正、税務行政の運営などの基礎資料とすることを目的として、1951年から毎年実施されています。

大企業も飲食費の50%まで損金として認められる

ところで、「交際費」とはどのような費用なのでしょうか。国税庁によれば、「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(接待等)のために支出する費用」としています。

交際費は費用として所得から差し引くことができます。これを損金算入と言います。といっても、それには上限があります。資本金1億円以下の中小企業については年800万円までです(飲食代の50%を損金に算入する方法との選択)。

かつては、資本金1億円を超える大企業では、交際費は1円も損金として認められていませんでした。しかし、2014年度の税制改正で、大企業を対象に、飲食費の50%までが損金として認められるようになりました。最近になって企業の交際費が増えているのも、それが要因の一つだと考えられます。

「福利厚生費」が「交際費」だと指摘されることも

2018年7月5日、人気ダンスグループ「EXILE」や「三代目J Soul Brothers」などが所属する「LDH JAPAN」が東京国税局の税務調査を受けて、2017年3月期までの4年間で約3億円の法人税などの申告漏れを指摘されていたことがわかりました。

その内容は、本来は交際費として処理すべき、コンサートツアーの打ち上げなどの飲食費の一部をコンサートの関連費用として処理していたというものでした。

「LDH JAPAN」の資本金は非公開となっていますが、前身となる企業の設立時の資本金が300万円だったことを見ると、現在も資本金1億円以下の中小企業にあたると考えられます。前述したように、中小企業が費用として所得から差し引くことができる交際費は年間800万円(または、飲食費の50%まで)ですから、4年間で約3億円の申告漏れとはずいぶん大きいものですね。

ちなみに、これから開催するコンサートの企画をスタッフで打ち合わせるときなどに用意したお弁当やお茶の代金などは「会議費」や「製作費」として損金に算入できます。ただし、すでに終了した仕事の打ち上げに使った飲食代などは「交際費」と解釈されるのが一般的です。

打ち上げは、社外の人が参加していない場合でも「社内飲食費」という交際費になります。ただし、多くの従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのための費用は交際費ではなく福利厚生費とされるのが一般的です。また、取引先との会食などでも、1人あたりの金額が5,000円以下である費用は交際費から除かれます。

と紹介しましたが、「福利厚生費」か「交際費」かは明確な基準があるわけではありません。「福利厚生費」として処理したものが「交際費」に該当すると、税務署などから指摘を受けることもあります。

また、取引先との会食でも、1人あたりの金額が5,000円以下になるように参加人数をごまかすことは論外ですが、社内飲食費にしないために形の上だけ、社外の人に1人参加してもらうというのも、意図的だと見なされることもあります。こうしたことを理解し、適正に使いたいものです。

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上山 光一