子どものしつけ、「厳しくすればちゃんとできる」は間違い!?

過度な強制は子どもの自律を妨げる

日本では「しつけは厳しい方が良い」という風潮がありますよね。子どもが少しでも失敗すれば怒り、できなければできないほど厳しくしたり子どもを責めたり、「子どものしつけがなっていないのは自分の厳しさが足りないせいだ」と思う人もいるのでは。しかしあまりに厳しいしつけは、子どもの自律を妨げてしまうこともあるのです。

しつけに対する親の本音

一度教わればすぐに理解してできるようになるのは、大人ならでは。子どもが教えられたことをできるようになるまでには、「脳の機能、身体機能、基本的信頼感、経験」が十分に成長し、満たされる必要があります。子どもは何百回と教えてもらい、何十回と失敗を重ね、心身の成長とともに少しずつできるようになるのですね。

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しかし現代のように親が忙しいと、しつけに時間がかかれば心身ともに疲弊してします。特に母親一人で育児を担うワンオペ育児の場合、子どもをしつけるのも、泣きわめく我が子に対応するのも、お漏らしを拭くなど物理的な対応をするのも、全て母親一人。

さらにきょうだいがいる場合、同時に他の子が泣いたり、食べ物をこぼすなどして、手に負えなくなります。「丁寧にしつけを教える」余裕などなく、感情のまま怒ったり、教えてもすぐにはできない子どもを責めてしまうこともあるでしょう。

また、たとえばトイレトレーニングのように、周囲と比べて我が子が遅れていることに焦ることもあるでしょう。しつけがなってなければ、親が周囲から白い目で見られることも少なくありません。現代では、親子共に「しつけが辛い」ものになっているでしょう。

他人から強制されることの弊害

さて、今度は子ども側からしつけについて考えてみましょう。親としては「厳しいほどしつけられる」と思いますが、児童精神科医の佐々木正美氏は、「強制の強すぎるしつけは、自律をさまたげる」(『子どもへのまなざし』福音館書店)といいます。

他人からコントロールされるのは、自律ではなく「他律」。それでは子どもは無力感が大きくなり、自分で自分を律する力が弱くなってしまうのです。

自分で自分を律するということは、人生にとって一番といって良いほど大切なことではないでしょうか。勉強やスポーツ、仕事、友人関係、結婚、子育て…何にしても、自律心がなければ始めることも、続けることも難しくなってしまいます。

では、どうすれば良いかというと「(教えたことを)積極的に実行しようとする気持ちや機能が熟してくるのを、子どもまかせにして待っていてあげる」(同著)と佐々木氏はいいます。

してはいけないことややり方は教えるものの、できるようになる時期を子どもに決めさせると、他律ではなく自律になるのですね。「子どもができるようになるのを待っていてあげる」視点が求められます。

「感情」に善悪はない。「原因」に目を向けよう

そうはいっても、正論と現実は異なります。核家族、ワンオペ育児、共働きという現代の家族環境では、しつけに時間がかかればイライラするのも当たり前でしょう。

覚えておきたいのは、感情自体に善悪はないことです。感情は自然と湧き上がるものですから、「イライラする自分が悪い」と責める必要も、罪悪感を感じる必要もないのです。イライラしたり怒りの感情が湧きあがったら、その感情よりも、原因の方に目を向けましょう。

本来、人間は大人数で育児をする動物ですから、母親1人でも、夫婦2人のみで育児をするのも大変なことです。まずは「母親1人でも完璧に育児ができて当たり前」という間違った価値観を、捨てる勇気を持つことが必要でしょう。育児には大勢の人間が必要ですし、完璧な育児なんてものはないのです。

子どもへの期待も大き過ぎないでしょうか。我が子ですから、期待するのは良いことです。でも「できて当たり前、なぜできないのか」という目で子どもを見ると、褒めることを忘れ、あら探しばかりしてしまいます。「いつかできるようになるけれど、今はできなくて当たり前」という長い目で見てみましょう。

物理的な環境対策をしておくことも大切です。人手が少ないのですから、余分な家事や動作をなるべく減らしましょう。たとえばお漏らしの後片付けが大変ならカーペットを外してフローリングのみにし、リビングにタオルや替えのズボンを用意しておくだけでも少し楽になります。

しつけを親子の喜びに

佐々木氏は、しつけについて「子どもたちにとっては、ある意味では喜びなのです。新しいことを知ることや身につけることによって、大人の仲間入りができるようになることですし、できないことができるようになることですから、子どもにとっては喜びなのです」(同著)といいます。

3人をワンオペ育児中の筆者にとって、これは目からウロコでした。子どもにとって喜びということは、親にとっても喜びになるということです。

できなくて当たり前でいて、いつかできるようになるという希望を持ち、小さなことでもできるようになったら親子で喜ぶ。親子でしつけを喜ぶ瞬間が増やすために、イライラの原因を少しでも減らすよう考えたいと思います。

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宮野 茉莉子

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宮野 茉莉子

東京女子大学哲学科を卒業後、野村證券を経て2011年よりライターへ。
主な執筆分野は育児、教育、ライフハック、女性の社会問題、哲学など。
子どもから大人まで「自分の頭で考える」哲学の面白みを伝えるべく執筆中。禅好きの3児の母。