2017年に実施した50-69歳12,000人アンケートでは、現役6,333人の「期待」と退職6,250人の「現実」を比較することができた。その内容をまとめるなかで、退職後の人生が夫婦2人の場合と単身の場合ではかなり様相が異なるのではないかとの感触を持った。

そこで、今回は単身「D(Decumulation、資産活用)」世代の資産の引き出しの特徴を分析した。データ中心のレポートは、4月25日付けで資産運用NAVI「白書・レポート」に収載している。

単身「D」世代の退職後のライフプラン ―「期待」と「現実」に20年のギャップ

「D」世代の退職時点に関する「期待」と「現実」のギャップは6歳くらいだった。現役世代は65.7歳での退職を「期待」するが、「現実」には男性が平均59.3歳で退職していた。これに対して、単身「D」世代では、さらに大きなギャップが出ている。未婚者の場合には、男性でそのギャップが12歳強、女性で10歳弱。

ところでこのギャップが一番大きいのが女性で既婚・配偶者有りのセグメントだ。退職者の平均退職年齢は52.5歳、現役者の退職希望年齢は65.6歳で、そのギャップは13歳にも達する。退職時に配偶者が働いていることが想定以上に早い退職を受け入れている背景かもしれないが、あまりにもギャップが大きい。

一方、人生設計では84歳までを想定している人が、未婚者で71.5%、既婚者で(配偶者無し・有りともに)64.6%と、ともに高い比率となっている。60歳の男性の20%が91歳、女性の20%が96歳まで生きる時代にあって、ここにも10年程度のギャップが存在する。

特に未婚者は80歳までの人生を設計している人が4割超えるなど、かなり短い退職後人生を想定していることがわかる。

これらのデータを総合的に見ると、退職後の生活年数の「期待」値は20年で、「現実」は40年となり、あまりにも退職後のライフプランがずさんになっていることが露呈している。

これら20年以上のギャップは、退職準備のための収入が想定を下回る可能性(=早い退職で準備額が減る)と、想定よりも長くなる退職後の生活年数(=楽観的な計画に比べて必要額が増える)という形で、退職後のライフプランを根本的に見直す必要性を示唆している。

20年のギャップが2000万円の準備不足に

たとえば、退職後年収250万円で、その4割を自助努力で積み上げた資産からの引き出しで賄うとすると、20年のギャップは2000万円の追加資金が必要になる計算だ。退職してから、この資金を新たに生み出すことは難しいと考えられることから、現役時代における十分保守的な退職後のライフプランを立てておく必要がある。

婚姻別 現役者の退職希望年齢と退職者の退職年齢(単位:人、%、歳)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、資産活用世代のお金との向き合い方アンケート、2017年8月

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史