米国半導体工業会(Semiconductor Industry Association=SIA)によると、2018年5月の世界半導体市場(3カ月の移動平均値)は前年同月比21%増の387.2億ドルとなり、単月ベースの過去最高を更新した。前年同月比で成長率が20%を超えたのは17年4月から14カ月連続、2桁成長という見方をすれば16年12月から18カ月連続であり、引き続き半導体市場は力強い成長を維持している。

過去20年で成長期は4回あった

 1999年からの過去20年を振り返ると、対前年同月比で2桁の成長率が連続した期間が4回ある。①99年5月~01年1月の21カ月間、②02年8月~05年3月の32カ月間、③09年12月~11年2月の15カ月間、④そして現在も継続中の16年12月~18年5月だ。

 ①は先進国で携帯電話の普及が本格化し、のちに「ITバブル」と呼ばれた。②は半導体の生産が200mmウエハーから300mmウエハーへ、先端の配線プロセスがアルミから銅へそれぞれ本格的に移行した時期、③はリーマンショックからの回復期にあたる。

過去3度の成長期の背景

 この各成長期について、地域別の動向を見てみる。
 
 ①の期間における地域別の平均成長率は、米州(Americas)27.0%、欧州(Europe)23.3%、日本(Japan)38.2%、アジア・パシフィック(APAC=中国含む)36.6%で、日本の成長率が最も高かった。ちなみに、この間の為替レートは1ドル=約110円だった。

 ②については、米州10.7%、欧州17.4%、日本22.0%、APAC32.9%だった。この頃の日本は「デジタル情報家電」の立ち上げに注力し、シャープやパナソニックらが液晶・プラズマテレビの大型化を競った。一方で、中国をはじめとするアジアでの電子機器の組立生産が飛躍的に伸び、半導体需要の中心地が完全にアジアに移行した。

 ③では米州41.3%、欧州26.7%、日本18.2%、APAC38.1%だった。APACの成長率を米州が上回り、日本の伸び率は4地域で最も低かった。しかも日本は18.2%伸びたことになっているが、この期間の為替レート、1ドル=87円という「超円高」がドルベースで金額を押し上げた影響が大きい。

 実際のところ、日本では半導体事業に再編の嵐が吹き荒れ、円ベースでは横ばいを維持するのが精一杯だった。これに見るように、世界的なドル安が米州のAPACを上回る金額成長につながった。

現在の好況は米国が牽引している

 では、現在の④はどうか。米州31.9%、欧州16.2%、日本13.3%、中国22.3%、APACその他14.9%で、意外なことに中国よりも米国の成長率の方が高い。この間の為替レートは1ドル=約111円で、①の期間と大差ない。

 大半の電子機器の生産がアジア諸国へ流れてしまったなかで、米国が依然として世界半導体市場の成長の牽引役になっているのは、Amazon、Google、Facebook、Microsoft、AppleというIT大手5社がデータセンターの整備に巨額の投資を断行していることが要因と考えて間違いないだろう。この5社の17年における設備投資額は総額1400億ドルにのぼる。このすべてがデータセンサー整備に費やされているわけではないが、半導体の牽引役が電子機器から通信インフラにシフトしていることを如実に物語っている。

 その米国と中国が今、激しい貿易戦争を繰り広げつつある。米国は、ハイテク分野で猛追する中国の成長スピードを少しでも弱めようとして、かつて日本に迫ったような半導体摩擦を中国に仕掛けるつもりのようだが、両国の争いが好調な半導体市場の腰折れ要因にならないことを祈るばかりだ。

(津村明宏)

 

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏