防衛力の強化を目的に防衛予算の増額が行われており、受注拡大が見込まれる銘柄の株価が反応しています。
防衛装備品の国内最大手は三菱重工<7011>です。そして川崎重工<7012>は潜水艦に関しては、三菱重工と二枚看板と言うべき存在です。
国際情勢の緊迫化を受け防衛予算の増額が進む中で、業績拡大が見込まれる両社の業績及び株価を見てみましょう。
1. 三菱重工業<7011>の業績推移:着実な増収増益が続く
戦前は零戦の開発製造を手掛け、現在は発電設備・社会インフラ装置・防衛装備品などを手掛ける三菱重工業の業績推移は以下の通りです(IFRSを採用)。
1.1 【2022年3月期】
- 売上収益:3兆8602億円
- 事業利益:1602億円
- 当期利益:1135億円
1.2 【2023年3月期】
- 売上収益:4兆2027億円
- 事業利益:1933億円
- 当期利益:1304億円
1.3 【2024年3月期】
- 売上収益:4兆6571億円
- 事業利益:2825億円
- 当期利益:2220億円
1.4 【2025年3月期(予想)】
- 売上収益:4兆9000億円
- 事業利益:3500億円
- 当期利益:2300億円
※当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益
足元では着実な増収増益が続いており、売上収益は2023年3月期に4兆円を突破しました。売上が伸びない、とかつて言われた同社ですが、現在は着実な増収を見せており、2024年3月期の売上は5兆円目前に迫る予想です。
2. 川崎重工業<7012>の業績推移:不祥事による影響が懸念されるが…着実に増収
神戸に本社を置き、三菱重工に比べ規模は約1/2ながら、戦前は空母や戦闘機の開発製造を行い、現在は航空エンジン・二輪車・鉄道などを手掛ける川崎重工業の業績推移は以下の通りです(IFRSを採用)。
2.1 【2022年3月期】
- 売上収益:1兆5008億円
- 事業利益:303億円
- 当期利益:126億円
2.2 【2023年3月期】
- 売上収益:1兆7256億円
- 事業利益:823億円
- 当期利益:530億円
2.3 【2024年3月期】
- 売上収益:1兆8492億円
- 事業利益:462億円
- 当期利益:253億円
2.4 【2025年3月期(予想)】
- 売上収益:2兆2250億円
- 事業利益:1300億円
- 当期利益:780億円
※当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益
川崎重工も着実な増収が続いています。自衛隊から受注した潜水艦を巡り不祥事が生じており、今後の影響が懸念されますが、同社は三菱重工とともに自衛隊の装備には欠かすことのできない企業です。2025年3月期は売上2兆円を突破の予想となっています。
3. 防衛関連を含む受注額が両者ともに急増中
三菱重工と川崎重工ともに着実な増収が続く中で、防衛分野の状況はどのようになっているのでしょうか。セグメント別の数字を見てみましょう。
3.1 三菱重工
三菱重工は2024年3月期末の航空・防衛・宇宙部門の受注高が2兆687億円(前期末は7036億円)となり前期比で約3倍の伸びを見せました。
同部門の売上収益は7915億円(前期は6194円)であり、受注急増が今後の売上に順次反映されます。
同社はH3ロケットなども手掛けており、同部門が全て防衛装備品の受注ではありません。それでも受注額は前期比で約3倍に伸びており、今後の業績に与える影響は大きいといえるでしょう。
3.2 川崎重工
また川崎重工も、自衛隊向けに輸送機などを手掛ける航空宇宙システム部門の受注高が2024年3月期は6926億円(前期末は3455億円)と倍増しました。
同社は航空エンジンに強みを持ち、同部門の全てが防衛関連ではないものの、同部門の受注の伸びは他部門を引き離しています。売上収益は3961億円(前期は3488億円)で微増に留まっており、こちらも今後の決算に与える影響は大きいといえます。
両者とも政府の防衛費増額の影響は既に受注高に表れていると見られ、今後は売上や利益に受注増が徐々に反映されると予想されます。
4. 株価は2024年に入り上昇が加速
最後に両社の株価を見てみましょう。
4.1 三菱重工の株価推移
三菱重工株は2022年から緩やかな上昇が続く中で、2024年に入り上昇が加速しています。
三菱重工業株式会社の株価チャート7/8
出所:LIMO編集部作成
2024年は800円台で取引をスタートしましたが、7月初旬には2000円に到達し約3倍近い株価上昇を半年で達成しました。受注残からは航空・防衛・宇宙部門の今後の事業拡大が確実ではあるもの、株価上昇スピードは急といえます。
4.2 川崎重工の株価推移
川崎重工も2024年から株価が大きく上昇しています。
川崎重工業株式会社の株価チャート8/8
出所:LIMO編集部作成
1月に3000円台前半でスタートした株価は、6月下旬には6000円に至り株価は半年で約2倍となりました。
三菱重工の約3倍には及びませんが、川崎重工も大きな株価上昇を見せています。
5. 両社ともに更なる株価上昇となるのか。要注目
両社ともに株価は業績拡大を折り込み過ぎの懸念もありますが、受注は急速に増えています。両社とも大きな上昇後の株価水準を維持し更なる上昇の可能性もあるのか、今後の業績及び株価の行方が注目されます。
参考資料
- 三菱重工業株式会社「2023年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
- 三菱重工業株式会社「2024年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
- 川崎重工業株式会社「2023年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
- 川崎重工業株式会社「2024年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
- 三菱重工業株式会社「2023年度決算説明資料」
- 川崎重工業株式会社「2023年度決算説明資料」
石井 僚一