二人以上世帯について、世代ごとの貯蓄状況についてシリーズでお伝えしている「年齢別平均貯蓄」。今回は40歳代の貯蓄についてです。「お金」の話は仲の良い友人でもなかなか聞きにくいもの。なかなか身近な人の間でも出にくい話題ではないでしょうか。

40歳代といえば、子育て真っ最中、また老後のための貯蓄も必要だと一部の人は意識し始めるケースもあるでしょう。では、その40歳代の世帯は一体どのくらいの貯蓄があるのでしょうか。

ちなみに「貯蓄」と「貯金」は似ているようで異なります。今回は総務省のデータをもとに貯蓄及び負債現在高の平均値の過去10年のデータを遡って振り返ってみましょう。

40歳代の貯蓄高とは

総務省は2018年5月に「家計調査報告」[貯蓄・負債編]平成29年(2017年)平均結果の概要として調査結果を発表しています。同調査では、二人以上の世帯に関して世帯主の年齢階級別貯蓄や負債現在高を公表しています。

データを俯瞰する際には、平均値、中央値だけではなく、分散や標準偏差なども知りたいところです。ただ、今回の世代別の貯蓄及び負債現在高については平均値のデータとなっています。今後の私たちの老後準備のためにも、詳細データの開示については総務省の今後の積極的なデータ開示に期待したいところです。

さて、2017年は40歳代(40~49歳)の貯蓄現在高は1074万円となっています。この1074万円という水準は過去10年を振り返ってみると、2015年の1024万円が最も低く、そこを底として切り返していますが、10年前の2008年の1179万円からは減少しています。

また、過去10年の40歳代の貯蓄現在高推移は以下の通りです。

  • 2008年:1179万円
  • 2009年:1111万円
  • 2010年:1082万円
  • 2011年:1118万円
  • 2012年:1033万円
  • 2013年:1049万円
  • 2014年:1030万円
  • 2015年:1024万円
  • 2016年:1065万円
  • 2017年:1074万円

40歳未満は貯蓄現在高は2008年と比較すると増加していたのに対して、40歳代は減少ということになっています。40歳代の「ためられない」経済状況が透けて見えるようです。40歳代は第2次ベビーブーマーの世代も重なっていますが、年収が増えない中で生活費や教育費などがかさむ苦しい話は周りに多くあります。

また、ここまで見てきたように10年前と比べると貯蓄現在高は減少しています。アベノミクスはどこへ行ってしまったのでしょうか。まさに「逃げられない世代」ともいえます。

負債高もやや増加

貯蓄現在高をここまで見てきましたが、負債現在高も見ておきましょう。

実は40歳代の貯蓄現在高は先に見てきたように10年前と比べやや減少しているのですが、負債現在高は増加しています。貯蓄は減り、負債は増えるという最悪のパターンです。

過去10年の40歳代の負債現在高は以下の通りです。

  • 2008年:954万円
  • 2009年:942万円
  • 2010年:940万円
  • 2011年:871万円
  • 2012年:978万円
  • 2013年:994万円
  • 2014年:1051万円
  • 2015年:1068万円
  • 2016年:1047万円
  • 2017年:1055万円

こうしてみると40歳代の負債現在高は2014年には1000万円を超え、その後は横ばい水準ですが、減りそうな気配は感じません。

もっともこの世代の負債は殆どは持家、住宅に関係するものでしょうから、住宅ローンが借りやすくなりアロワンスが増えたことや不動産価格の上昇なども影響している可能性もあります

まとめにかえて

40歳代の世帯主の貯蓄と負債の状況は、貯蓄が減る中で負債が増えるという構造です。これは決して健全な姿とはいえないでしょう。40歳代といえば、会社でも同期の多くが課長として活躍しているという年齢でもあるでしょう。そんな彼ら・彼女らの経済状態が苦しいようでは日本の将来も思いやられます。引き続き日本を支える40歳代のお財布事情に注目していきたいと思います。

【ご参考】総務省のデータ使用上の注意点

同調査でいう「貯蓄」とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計を言います。いわゆる「貯金」、「預金」だけではないことに注意が必要です。表現としてはどちらかというと「金融資産」という方が近いかもしれません。また、同調査の貯蓄は世帯全体の貯蓄であり、また、個人営業世帯などの貯蓄には家計用のほか事業用も含めるとされています。したがって、個人事業主においてはそれに関係する資産も含まれるという点にも留意する必要があります。

青山 諭志