新入社員も研修期間が終わり、会社になじんできたころではないでしょうか。ところで、みなさんは「逆メンター制度」という取り組みをご存じでしょうか?

逆メンター制度ってどんなもの?

まず、メンターとは「助言者・指導者」という意味です。先輩社員や上司がメンターとして新入社員の教育を行うのは、最近の会社では比較的よく見られますね。「逆メンター制度」とはまさにこの逆で、若手社員がベテラン社員に対して教育する取り組みのことを指します。

発祥はアメリカですが、近年、国内でもこの「逆メンター制度」を導入する企業が増えつつあるようです。

実際の企業での例

例えば、アクサ生命保険では、ソーシャルメディアや最新トレンドについてなど、若手のほうが得意とする分野を中心に若手社員が役員らに教えるプログラムを導入したようです。

また、資生堂で行われている逆メンター制度は、助言者となる若手社員と異なる分野の役員をマッチングさせ、1年間、月2回ほど会議や面談、視察の同行などを行うといった制度のようです。

他にも、女性社員のワーク・ライフ・バランスの悩みの理解などを目的に、若手の女性社員が「相談役」として上司にアドバイスをするP&Gジャパンの取り組みなども挙げられます。

導入している会社の狙いは?

若手社員のほとんどは、PCやインターネットになじみ深い、デジタルネイティブ世代です。そのため、特に人材不足気味のIT部門などでは注目されているようです。もちろん、IT知識以外にもメリットは多々あるようです。

会社全体のメリットとしては、社内でのコミュニケーションの活性化などが挙げられます。話す機会が増えることで、生活環境の相違や世代間ギャップを埋めることができ、互いに知見を広めるきっかけとなりアイディアを生み出しやすくなるようです。

上司側のメリットとしては、部下の悩みや特性を把握しやすく、効果的な人材活用や、良好な職場関係の構築などにもつながります。また、自身の知らない知識や情報を得ることで、精神的に刺激になり、モチベーションの向上にもなるようです。

部下側のメリットとしては、自分の能力を発揮できる機会の増加が挙げられます。また、ベテラン社員との交流により、礼儀作法や専門知識、仕事スキルなどを学ぶことができます。

上司としての威厳がなくなる!?

しかし一方で、部下に教えられるのは……。という方も少なくありません。Yahoo!意識調査でも、半数以上が逆メンター制度に「抵抗がある」と回答しています。

特に日本の会社では、依然として年功序列的な風潮が主流なため、安易には受け入れ難いかもしれません。ネット上では、「上下関係が崩れてしまうのではないか」「相性が悪かったら今後のキャリアも左右されそう」などというコメントも見受けられます。導入して比較的うまくいっている企業に外資系が多いのは、偶然ではなさそうです。

互いの心構えから良い効果を生み出す

「若造のくせに」「うるさいなぁこの老害」といった態度ではなく、上司側は「新しいことを学ぼう」、部下側は「自分にできることで会社の役に立とう」という心構えで、お互いに接することができれば、良い効果が生まれるのではないでしょうか。

コミュニケーションや職場環境の改善のために、さまざまな制度が開発されていますが、従来のメンター制度とあわせて、この「逆メンター制度」も注目していきたいですね。

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