筆者は、資産運用に関する相談業務を仕事としているのですが、お客様から将来の年金制度についての不安の声をよく耳にします。
公的年金は世の中の物価や賃金の変化に合わせて毎年見直しが行われており、今の受給見込み額が将来的に保障されているわけではありません。
私たちには保険料納付義務がありますが、それに対して自分は将来いくら受け取れるのか、と今後の不透明さに不安を覚えるのは無理もないでしょう。
少しでも不安を解消できるよう、まずは現行の公的年金制度の仕組みや概要を理解し、ある程度の目安を把握しておくことをおすすめします。
また、ライフスタイルは変化していきますので、今のうちに色んなパターンを考えてみることも必要でしょう。
本記事では、厚生労働省から公表された「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、最新の厚生年金と国民年金の受給額を確認していきます。
個人でどのような違いがあるのかも一緒に見てみましょう。
1. 公的年金制度「国民年金・厚生年金」の仕組みや概要を理解する
日本の公的年金制度は「国民皆年金」であり、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が「国民年金」に加入する義務があります。
一定の要件を満たす会社員や公務員などは国民年金に上乗せする形で厚生年金に加入します。
まずはこの基本的な2階建ての構造を理解しておきましょう。
国民年金と厚生年金は、対象者・保険料や年金額の決定方法などに違いがありますので、簡単に確認しておきます。
1.1 国民年金(1階部分:基礎年金)
- 加入対象者:原則、日本国内に住む20歳以上60歳未満の全員
- 保険料:全員一律(年度ごとに改定あり)※2024年度は月額1万6980円
- 老齢年金の決定方法:保険料の納付期間に応じて決定
注)国民年金の被保険者は第1号~第3号の3つに分類されます。
- 第1号被保険者:20歳以上の学生や自営業者など
- 第2号被保険者:厚生年金にも加入する会社員や公務員など
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者
第1号被保険者は自身で国民年金保険料を納付。第2号・第3号被保険者の国民年金保険料は、第2号被保険者が加入する厚生年金制度によって負担されるため、個別で納付する必要はありません。
1.2 厚生年金(2階部分)
- 加入対象者:一定の要件を満たす公務員やサラリーマン、パート・ アルバイト従業員など(国民年金に上乗せして加入)
- 保険料:毎月の給与や賞与などの報酬に応じた保険料を企業と折半して支払う(上限あり)
- 老齢年金の決定方法:加入期間や保険料の納付額に応じて計算(国民年金に上乗せして支給)
現役時代に厚生年金に一度も加入したことがなければ「国民年金」が、加入したことがあれば「国民年金+厚生年金」が老後に支給されます。
では、現在老齢年金を受給している高齢者たちは、毎月いくらの年金で生活しているのでしょうか。
厚生労働省から公表された「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、国民年金と厚生年金(国民年金を含む)の平均月額を確認していきます。