明日の日銀短観は本当に悪化するのか

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日銀短観には癖があることを考えると、明日の結果は悪くなさそうだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は予想します。

日銀短観は、市場関係者の関心が非常に高い

日銀短観は、市場関係者の関心が非常に高いですね。市場関係者が最も注目しているのは金融政策で、それを担当している日銀という機関が実施しているアンケートだからでしょうね。もちろん、日銀短観は回答社数も質問項目も多く、景気関連のアンケートとしては最大ですから、それも注目される理由なのでしょう。

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数ある項目の中で、業況判断DIが注目されますが、経済指標に比べてタイミングが早いというアンケートのメリットが最も現れているからなのでしょう。中でも大企業製造業のDIが注目されているのは、上場企業に占める大企業製造業のウエイトが高く、株価を考える際に便利だからでしょう。ちなみに、業況判断DIというのは、業況が良いと答えた企業の割合から悪いと答えた企業の割合を引いた値です。

もちろん、市場は美人投票の世界ですから、「皆が注目している物に自分も注目しよう」と皆が考えているため、皆が注目している物はいっそう多くの人々に注目される、ということもあるわけですが。

日銀短観には癖がある

日銀短観はアンケート調査ですから、経済指標に比べて「今後の予定」が聞けるなどのメリットがありますし、手触り感のある情報も得られますが、反面で癖があることには留意が必要です。

たとえば国内での製商品・サービス需給判断DIは、過去40年間ほぼ一貫して供給超過となっています。また、仕入価格判断は販売価格判断を過去40年間一貫して上回っています。そんなはずはありません。もしもそれが本当ならば、過去40年の間に回答企業のほとんどが倒産していたはずです(笑)。

ここから読み取れるのは、日本企業には「儲かりますか?」と聞かれたら「ダメですね」と答える癖がある、ということです。そのことを頭に入れた上で、明日の短観の大企業製造業業況判断DIを予想してみましょう。

大企業製造業の業況判断DIは悪化が予想されているが・・・

昨年12月の調査では、大企業製造業の業況判断DIは26で、それが3月までに21に悪化するだろうと予想されていました。実際の3月の結果は24でしたから、悪化はしましたが、予想されていたほどではありませんでした。上記のような癖があることを考えれば、自然なことですね。

ただ、一つ注意したいのは、3月がドル安円高だったということです。大企業製造業の業況は、ドル安円高になれば悪化しますから、26から24に悪化したのはそのせいでしょう。そうだとすれば、仮に為替レートが動いていなければ、業況判断DIは悪化しなかった可能性もあるはずです。

そうだとすると、12月の時点では3月のドル安円高が予想されていなかったはずですから、それを前提とすれば、26を予想すべきだったのに、21を予想したことになりますから、12月時点の予測は大きく外れたと言えそうです。かなり癖の影響は大きい(12月時点では5だった)と考えたほうが良いでしょう。

さて、3月時点では、6月にかけてDIが24から20に4だけ悪化すると予想されていました。上記の癖の影響幅である5を単純に割り戻すと、「本音では24から25に改善するという予測だった」と言えるかもしれません。加えて、3月から6月にかけては円安だったわけで、それにより業況が改善した可能性が高いことを考え合わせると、前回の24を上回る可能性は小さくないのかもしれませんね。

もちろん、原材料価格の上昇等々、上記以外の要因も考慮する必要があり、大手シンクタンクは揃って小幅の悪化を予想しているので、何とも言えませんが。

要注意なのは、「業況を聞かれているのに経営者の気分を回答する」という癖かもしれません。トランプ大統領の貿易摩擦は、経営者の気分を暗くしているでしょうが、現時点では各社の業況には影響を与えていないはずです。それが業況判断DIに悪影響を及ぼしている可能性をどう考えるのか。アンケート調査の問題点の一つですね。

大企業製造業の業況判断DIと景気は異なることに要注意

以上、市場参加者の参考にと考えて、大企業製造業の業況判断DIについて記しましたが、大企業製造業の業況判断DIは景気そのものではない、ということには留意が必要です。

ドル高円安になると、大企業製造業の業況は顕著に改善しますが、景気への影響はそれほど大きくありません。詳しくは別の機会に記しますが、今日のところは「ドル高円安になると、輸出企業がドルを高く売れて儲かった分と輸入企業がドルを高く買わされて損をした分が概ね同額だから」とご理解ください。つまり、為替レートが動くと、業況判断DIと景気が別々の動きをするわけです。

また、「企業が儲かると景気が改善する」というわけでもありません。企業が儲かっても、それで設備投資をするのではなく、銀行借入を返済するだけであれば、景気への影響はほとんどないからです。

反対に、「大企業製造業が儲かっているのは景気が良いからだろう」と考えるのは誤りではありませんが、上記のように円安だからかもしれませんし、「単に海外の景気が良くて海外子会社が儲けた分を本社に配当しているだけ」かもしれませんから、注意が必要です。

なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義


1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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(雑誌寄稿等)
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