4.2 小規模の個人経営でも社会保険に加入
社会保険の適用拡大が進めば、小規模の個人経営でも加入が必須となる可能性があります。
現行制度では、社会保険は個人事業所も加入対象です。
常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所は、社会保険の加入義務があります。
従業員5人未満の個人事業所も、厚生労働大臣の認可を受けた場合は社会保険への加入が可能です。
今後、適用の拡大が進めば従業員5人未満の個人事業所でも社会保険の加入義務が発生する可能性があります。
個人事業所に務める従業員にとっては保障が手厚くなる一方、事業主にとっては保険料の負担が増えてしまうことが想定されます。
4.3 副業などで複数の勤務先がある人・フリーランスの人も対象に?
副業やパートで複数の企業に籍を置く人も、今後は社会保険の適用対象となる可能性があります。
たとえば、勤務先がAとBの2社あり、うち1社で社会保険に加入している人の場合、2024年10月の適用拡大によりA社、B社どちらでも社会保険への加入が必要になる場合があります。
2社それぞれで社会保険に加入する場合、それぞれの事業所で受け取る給料を按分して保険料が決まります。
そのため、負担が若干増えることが予想されるでしょう。
一方で、2つの事業所で社会保険に加入できれば、厚生年金の受給額を増やせる可能性があります。
また、フリーランスのように特定の企業に属さない人に対しても、社会保険の適用が検討されています。
フリーランスは制度上個人事業主に該当しますが、企業と密接な関係性を築くことから「雇用関係」に近い実体で働いているような実態があります。
そのため、厚生労働省ではフリーランスにも社会保険を適用すべきではないかと問題提起がされているのです。
ただし、フリーランスが正社員やアルバイト・パートなどとは異なる働き方であるため、法整備などの課題も多く残っています。
今後の議論によっては、フリーランスにも社会保険が適用される日が来るかもしれません。
5. まとめにかえて
社会保険の適用拡大で、より多くの従業員が手厚い年金保障や医療保障を受けられます。
パートやアルバイトでも社会保険に加入できれば、将来の年金受給額が増えるため、老後への備えがしやすくなります。
一方で、社会保険の加入により負担が増えることに不安を感じる人もいるでしょう。
勤務先とあらためて社会保険のメリットや今後の働き方を確認し、この機会に自分のキャリアの歩み方を見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」
- 国立社会保障・人口問題研究所「令和 3(2021)年度 社会保障費用統計の概要」
- 厚生労働省「厚生労働省からのお知らせ 年収の壁・支援強化パッケージ」
- 日本年金機構「どうして被用者保険の適用拡大を進める必要があるのですか。」
- 内閣府「令和6年第6回経済財政諮問会議 議事要旨」
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
- 厚生労働省「複数の事業所で勤務する者、フリーランス、ギグワーカーなど、多様な働き方を踏まえた被用者保険の在り方について」
石上 ユウキ