5月末、ヤフーが「株式報酬」を従業員に提供することを発表しました。アップルやスターバックスなど、米国企業では常識のように支給されていますが、日本ではまだ一般的ではない株式報酬。ここでは、ヤフーが導入する「リストリクテッドストック(Restricted Stock Unit=RSU、譲渡制限付株式とも呼ばれます)」という制度を中心に紹介していきます。
優秀な人材が他社に移るのを防ぐ
RSUとは、簡単に言うと企業から従業員に、報酬として自社株が渡されます。それまでの給与にプラスして自社株がもらえるので、働く側にとっては嬉しい制度。今回の発表を受けて、SNSでは「うちでも導入してほしい」という肯定的な声が上がっています。
株式報酬が日本でも導入されるようになったのは2016年からで、比較的新しい報酬制度といえます。ヤフーのほかにも伊藤忠商事、三菱地所などが導入しています。
この制度では、もらった株を売れるようになるまで時間がかかります。ヤフーの場合は3年に設定されていて、その期間中は株を持っていても売ることはできません。もしその間に会社を辞めた場合は、その人が持っていた株はそのまま企業に戻ります。
一定期間、会社に在籍しなければならないため、優秀な人材が転職することを防げるなど、退職率の低下が見込めます。
ストックオプションとの違い
RSUに比べて馴染みがあるのが「ストックオプション」でしょう。IT関連では楽天が導入しているほか、三菱商事や富士フイルムも導入しています。
ストックオプションも似たようなものですが、異なるのは、報酬として渡されるのは「あらかじめ設定された購入額で株を買える権利」です。たとえば、現在の自社株価が50だとして、将来的には制限はありながらも100で購入できる権利がもらえるのです。現在の株価よりも高く設定されるのがポイントです。
ストックオプションはRSUとは異なり、在籍しなければならない期間はありません。もらったらすぐに売ることができます。しかし、100で買って50で売るのは損。株価が100を超えるまで待つ方が得なので、自然と在籍期間が伸びることになります。
RSUのデメリット
RSUはまだ導入が始まったばかりです。しかし、すでに見えている問題点がいくつかあります。
(1) ストックオプションに比べて、社員の株価向上への努力が見込めない
ストックオプションは、株価を上げなければ自然と損をしてしまいます。しかし、RSUは、現在の株価で、無償でもらうことができるので、特に損をすることはありません。そのため、ストックオプションに比べて株価を上げようとする努力は見込めません。
(2) 株式の価値が下がる
RSUは、導入する際に従業員分の株式を新しく発行します。ヤフーの場合は約3億7000万円分、三菱商事の場合は約5億7200万円分。これによって1株あたりの価値は下がるため、現状の株主にとっては、あまり気持ちのよいものではありません。
法整備が進み、株式報酬を導入する企業が増えてきています。働く側としては給与にプラスして株がもらえるので、いいことづくめですが、企業にはデメリットも。ヤフーや楽天に続く会社が出てくるのか、日本での今後の動向に注目です。
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