はじめに

パートというと社会保険もないし、有給も取れないし、やっぱり正社員になった方がお得なのではないか?と思う方もいるかもしれません。

ですが、近年は制度の上でもパートなどの非正規雇用の労働者の立場を改善しようという流れが強まっており、実際に、パートでもキャリアを積んだり、正社員並みの待遇で働けるようになったりという職場もみられるようになってきました。

この記事では、パートとして働くこととはどのようなことなのか、またどうしたら「お得に」働くことができるのかをご紹介していきます。

目次

1. パートとパートタイム労働者
2. パートとアルバイトの違いは?
3. パートでも社会保険に入れるって本当?
4. パートだって有給休暇をもらえる!?
5. パートならやりたい仕事ができる
6. 長く働くならパートは不利?
7. パートでも確定申告が必要なの?

パートとパートタイム労働者

パートというと主婦が空いた時間を利用して短時間働くというイメージの方もいるかもしれません。しかし、そもそもパートとはどのように定義されているのでしょうか?

パートは、正式にはパートタイム(part time)といいます。こちらは「一部の時間」という意味の英単語から取られた言葉で、英語でもアルバイトやパートのような臨時の仕事を”part time job”と呼び、いわゆる「9時~5時」のフルタイムの労働とは区別して考えられています。
法律上も、フルタイムではない短い時間働く労働者を総称して「パートタイム労働者」と呼んでおり、これには、いわゆる「パート」だけでなく、アルバイトや嘱託、契約社員など、一週間を単位として正社員などより労働時間が短い労働者全般が含まれています。そして、このような労働者の立場を改善するための法律として「パートタイム労働法」(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」) が定められています。

つまり、パートとはパートタイム労働者の呼び名の一つであり、国内外を問わず、フルタイムで働く正社員とは異なる働き方として考えられ、法律の面でもさまざまな働き方の一つとして認められています。

パートとアルバイトの違いは?

パートもアルバイトも、法律上は「パートタイム労働者」に含まれるため、扱いには変わりはありません。にもかかわらず、このように呼びかたに違いがあるのは、実はその歴史に由来しています。

「アルバイト」という言葉はドイツ語で「仕事」などを意味する”Albeit”が語源で、明治時代に学生が勉学の片手間にやる家庭教師などの仕事をする時に、隠語としてこの言葉を使ったのが語源といわれています。そのことから、現在でも学生が行うパートタイムの仕事が、アルバイトと呼ばれる慣習が根付いているようです。

これに対して「パート」という言葉が使われるようになったのは、戦後、日本電信電話公社(現NTT)が主婦を「パートタイム職員」として雇用したのがきっかけといわれています。その後、百貨店などでも主婦をパートタイムの販売員として雇うなどして広まっていき、主婦が行うパートタイムの仕事をパートと呼ぶことが定着したようです。

このようにパートとアルバイトのどちらの場合でも、呼び方が徐々に社会に浸透していくにつれて、様々な場所で使われるようになったことが分かります。その背景には、雇用者の側からみても「パート」や「アルバイト」と書いてあれば、募集しているのが学生なのか主婦なのかが分かりやすくなるなどのメリットがあったのかもしれません。

パートでも社会保険に入れるって本当?

パートやアルバイトというと、以前は厚生年金や健康保険といった社会保険がないのが当たり前でした。しかし、非正規雇用の労働者の立場を改善するという観点から、近年は徐々に加入条件が緩和され、現在では従業員が501人以上の会社では、労働時間が週20時間以上で1ヶ月の賃金が8万8000円(年収約103万円)以上、雇用期間の見込みが1年以上であれば加入対象となっています。また、500人以下でも労使で合意すれば会社単位で加入できるようになりました。

簡単にいうと、従業員が501人以上の会社であればだいたい週20時間以上働いて、1年以上勤める予定であれば、社会保険に加入する権利が得られる、ということです。社会保険に加入すると将来もらえる年金の支給額が増えたり、失業保険の対象となる場合があるなどメリットは大きいので、条件を満たしているならば、一度検討してみるのがよいでしょう。

500人以下の会社の場合、パートの立場で労使交渉を求めるというのは難しいかもしれませんが、理解のある経営陣・社員が多い場合や、会社がパートの待遇改善に積極的な場合など、社会保険に加入できるようになっている場合もあるので、働き始めるときや面接などで、社会保険に加入できるか確認してみることをおすすめします。

パートだって有給休暇をもらえる!?

休んでいる間も給料がもらえる有給休暇。パートでも利用できることを知らないかたは実は多いのではないでしょうか。パートでも6ヶ月以上働いていて、決められた労働日の8割以上出勤していれば、有給休暇を取得することができます。

決められた労働日の8割以上というのは、例えば1ヶ月の出勤予定日が15日の場合、12日以上出勤していればいいということです。言い換えれば、あまり頻繁に休んでる人は駄目だよという決まりで、きちんと出勤していれば半年後には、雇用形態に関わらず、誰でも有給休暇はもらえるのです。

どれくらい有給休暇が取れるのかは1年間の所定労働日数(出勤すると決められた日数)と勤続年数によって変わってきます。所定労働日数が週3日の場合は、半年勤続で1年に5日、1年半勤続で6日、6年半以上だと11日も有給休暇を取ることができます。

週1日の場合でも半年勤続で1日、1年半勤続で2日、4年半以上で3日の有給休暇を取得できます。また、パートでも週の所定労働時間が30時間以上で、週の所定労働日数が5日以上または年の所定労働日数が217日以上の場合(実質的にフルタイムで働いているということですね)、正社員と同じ有給休暇がもらえます。その日数は、半年勤続で10日、1年半勤続で11日、6年半以上勤続で20日となります。

パートならやりたい仕事ができる

パートで働くことにも正社員にはないメリットがあります。中でも一番大きいといえるのは働きやすさではないでしょうか。自分が働きたい時間に働きたい場所でやりたい仕事ができる、これは正社員にはなかなかできないパートならではの大きな魅力です。

また、未経験者OKの仕事も多いので、やりたかった仕事に挑戦してみることができるというのもパートのメリットだといえるでしょう。

そして、時給や日給というのも、長い時間働けばそれだけ収入が増えるわけですから、収入を自分の意志でコントロールできるという意味では、メリットの一つと考えることもできるのかもしれません。

そして、現代はそのようなメリットを享受するための場が数多くあるというのも見逃せません。パートタイム労働の浸透や少子高齢化などの影響から現代は正社員よりもパートタイム労働者の募集が多い傾向にあり、様々な職種から仕事を選ぶことができるようになっています。副業を奨励する動きも加速し始めており、今は、働く側がより自由に働き方を選べるようになっているといえるのです。

長く働くならパートは不利?

最近は、非正規雇用の労働者が増えていることもあって、正社員と非正社員の間の差は小さくなってきています。それでも、平均賃金でいうと、非正社員は正社員の約3分の2でやはり差はあります。

そして、この差を詳しく見ると、勤続年数が長くなれば長くなるほど差が広がっていくといいます。正社員は長く働けば給料が上がっていくのに対し、パートの場合はほとんど上がっていかないのです。したがって、同じところに長く勤めれば勤めるほど、収入という部分でのデメリットは大きくなっていくということがいえるかもしれません。

また、時給や日給なので月によって収入が変化することもデメリットといえますし、ボーナスがない、福利厚生に差がある場合があるなど待遇面でデメリットを感じることもあるかもしれません。

さらに、待遇面以外でも、パートは正社員に比べて、やりがいを感じられないということもデメリットだといえるかもしれません。短期雇用が中心のパートタイム労働では会社としてもどうしても長期に渡って責任ある仕事を任せるのは難しく、いくら経験を積んでもやりがいを感じられる仕事を任せられることが少ない傾向にあるといえます。キャリアを積んでやりがいのある仕事をしたい、と考えるなら、パートとして働くことが不利な条件になることもあるでしょう。

パートでも確定申告が必要なの?

パートでも確定申告が必要になる場合もありますし、必要がない場合でも確定申告をすることによって還付金がもらえることがあります。

税制というのは複雑で様々な条件が重なるため苦手だ、という人も多いかもしれませんが、ご自身のケースに該当しないかチェックしてみましょう。

パートで確定申告をする必要があるのは主に次のような場合です。
・2ヶ所以上で働いている。
・年末調整が行われていない。
・年の途中で仕事を辞めた。

通常の場合、パートでも正社員でも、会社が源泉徴収を行って所得税を私たちの代わりに払ってくれています。そして多くの会社は年末調整を行ってその年の税金が正しく払われるように調整してくれています。

しかし、2ヶ所以上から給与をもらっていたり、会社が年末調整を行っていないような場合は、正確な税金の計算がなされていない可能性があるため。確定申告を行って正しい金額の税金を収める必要があります。ただ上の条件に当てはまる場合でも、年間の収入が103万円以下の場合、所得税を収める必要がないので確定申告をする必要はありません。

ただし、103万円以下でも源泉徴収されているような場合はお金が戻っくる場合もあるので、確定申告をした方がいいでしょう。

確定申告というと税金を納めるものというイメージの方もいるかもしれませんが、パートの場合、確定申告をすることでお金が返ってくるケースも多いので、源泉徴収票を見て税金を取られすぎじゃないの?と思ったら面倒臭がらずに確定申告をしてみるのがおすすめです。

おわりに

やはり、給料などの待遇面を考えると依然として正社員と比べて不利な状況にあることも多いパートですが、フリーランスやテレワークなどさまざまな働き方が受け入れられるようになっている中にあって、パートならではのどんどん新しいことに挑戦できるという良さもあるのではないでしょうか。

ただ時給のために単純な作業を繰り返すだけでなく、自分のやりたい仕事にパートという形で挑戦できる環境が現代では整ってきているのかもしれませんね。

既にパートとして働いているみなさんも、これからの働き方として気になっているみなさんも、パートのメリットを享受しつつ、やりたいことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

LIMO編集部