5. 老後のカギは「貯蓄・年金・生活費」のバランス
65歳以上の無職夫婦世帯に焦点を当てると、貯蓄額は平均2504万円、ひと月の年金は平均21万8441円、毎月の赤字は3万7916円であることがわかりました。
仮に平均通りの赤字が65歳~100歳まで続くとすると、約1592万円になります。ここで平均通りの2504万円という貯蓄があれば、何とか大丈夫と判断できますね。
次のステップは、「自身の世帯のシミュレーション」をしてみることです。
- 65歳の時点で貯蓄がいくら用意できそうか
- 支出はいくらまで落とせそうか
- 年金はいくらもらえるか
もちろん、インフレの進行や退職金制度の変更、あるいは自分自身のキャリア変更等により、その都度シミュレーションは変わってくるでしょう。
しかし、一度計画を立てておけば、細かな修正を繰り返すだけで済みます。漠然とした不安を抱えているという方は、まず年金見込額の把握から始めてはいかがでしょうか。
受給できる年金が少ない場合は、繰下げ受給の活用を検討するのも一手です。繰下げ受給とは、年金の支給開始を66歳以降にずらすことにより、受給額を増額できる制度です。
1ヶ月ごとに0.7%ずつ増えるので、もし年金月額が10万円だった人の場合、70歳まで待てば14万2000円に増えます。
ただし、これにより税金の課税対象になったり、加給年金が受け取れなくなったりすることもあるので、夫婦全体のメリットになるかどうか慎重に判断しましょう。
6. できることから老後資金の準備を始めよう
ここまで「貯蓄」「年金」「収支」の視点から統計データを見てきました。
平均的な貯蓄があれば、問題なく老後の生活を送れる可能性はあります。しかし、さらに物価の高騰が進む可能性や、医療費や修繕費等の突発的な支出も考慮すると、計画的に老後の準備をしていくに越したことはありません。
また、余裕をもった老後資金を準備できれば、旅行や教養などの趣味を充実できるかもしれません。
これを機に、どんなセカンドライフを送りたいのかを考えてみてはいかがでしょうか。
7. 【ご参考】NISA・iDeCoとは?
65歳以上世帯の貯蓄の保有内訳を見ると、有価証券の割合が増えてきていました。
そこでご参考までに、昨今話題になっている「NISA」や「iDeCo」はどんな制度なのかをご紹介していきます。
7.1 NISA
NISAは、少額からの投資を行う方のために2014年1月にスタートした「少額投資非課税制度」です。
2024年1月から非課税期間や投資上限額などが一新され「新NISA」としてスタートしています。
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかりますが、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になる点が魅力です。
7.2 iDeCo
iDeCoとは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つです。
加入は任意で、加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを自分で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに将来の給付額が決定します。
「拠出時」「運用」「受給時」それぞれで税制面の優遇がある点が魅力です。
ただし、積立てたお金は原則60歳まで引き出せない点には注意しておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2023年(令和5年)平均結果の概要」
- 総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2023年(令和5年)平均結果-(二人以上の世帯)」
- 厚生労働省「これまでの年金部会も踏まえてご議論いただきたい論点」
- 金融庁「NISAを知る:NISA特設ウェブサイト」
- 厚生労働省「iDeCoの概要」
LIMO編集部