「キャッシュレスFUKUOKA」に向け実証実験を開始
福岡市は2018年6月12日、公共施設の支払いをキャッシュレス化する実証実験に、モバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を採択したと発表しました。
この実験は、市が民間企業の実証実験を支援する「福岡市実証実験フルサポート事業」の一環で、6月中には、博物館、アジア美術館、動植物園、自転車駐車場などの市の施設でキャッシュレス決済の実証実験を開始します。
同市ではこのほか、市内の屋台、タクシー、商店街、都心商業施設など民間施設でのキャッシュレス決済の実証実験についても、LINEグループのほか、楽天、福岡銀行、ヤフーなど8事業者のサービスを採択し支援を行います。
これまで他の地方都市でもいくつかキャッシュレス決済の実証実験が行われているものの、利用できるエリアや施設は限定的でした。今回の福岡市の例のように、公共施設と民間施設双方で、さらには屋台などまでカバーしようとする試みはあまり例がありません。
インバウンドを含め、入込観光客数が年間2,000万人を突破する福岡市では、今年度から「キャッシュレスFUKUOKA」をキーワードに、民間企業と一体となった事業に取り組んでいます。実証実験プロジェクトがスタートすることで、取り組みがさらに加速することになりそうです。
高島市長のリーダーシップで「日本のシアトル」を目指す
今回のキャッシュレス決済の実証実験だけでなく、福岡市は先進的な取り組みを積極的に進めています。それをリードするのが高島宗一郎市長です。史上最年少の36歳で初当選し現在2期目の高島市長は、「スタートアップ都市・福岡」を掲げ、IT活用やスタートアップ支援策などの施策を次々と打ち出しています。
海外には米国のシアトルのように、自然が豊かなコンパクトシティでありながら、マイクロソフトやアマゾン、スターバックスのような企業を生み出した都市がいくつかあります。高島市長は早くから「福岡市を日本のシアトルにしたい」と語ってきました。
2014年には「グローバル創業・雇用創出特区」に選ばれ、スタートアップ支援センターや施設の設置のほか、法人減税(市税・国税)などの制度を導入しています。都心部・天神地区でのオフィスビルの容積率の緩和や、航空法による建物の高さ制限の緩和など、前例のない大胆な規制緩和も実行しています。
このような取り組みを受けて、この5年間で約260社が福岡市に進出しました。そのうち、10社は本社機能を福岡市に移しています。さらに、新規起業も進んでいます。福岡市での2015年度の開業率は7.04%で、政令市と東京23区を合わせた全国21主要都市の中で第1位でした(福岡アジア都市研究所調べ)。
人口も増加中。「ポテンシャルランキング」もナンバーワン
「地方都市は、少子高齢化にともない人口が減少し、元気がない」というイメージがありますが、福岡市はむしろそんなイメージを拭い去るようにパワフルです。
同市の人口は153万8000人あまりですが、2010年~2015年の5年間に74,938人(増加率5.12%)と、毎年1万人を超えるペースで増えています。この数値は政令指定都市(以下、政令市)中ナンバーワンで、2位の川崎市(49,701人・3.49%増)を大きく引き離しています。さらに若者(10代・20代)の割合も、22.05%と、政令市中1位になっています。
注:データの出所はいずれも国勢調査(2015年)
さらなる成長にも期待がかかります。野村総合研究所(NRI)が2017年7月に発表した「成長可能性都市ランキング」で、福岡市は「ポテンシャルランキング(実績とポテンシャルの差分で見た“伸びしろ”)」で第1位となっています。
同調査は、都市圏の人口規模などを考慮して選定した国内100都市を対象に、今後の成長性を左右する「産業創発力」の現状や将来のポテンシャルを分析したものです。都道府県レベルから一歩進み、都市の持つ成長可能性について、数値を用いて可視化している点に大きな特徴があります。
「総合ランキング」「ポテンシャルランキング」以外に、「風土」「基盤」「環境」「ライフスタイル」など12のランキングで比較していますが、福岡市は全てのランキングで10位以内に入っています。
まさにシアトルのように、アジア・世界にインパクトを与える都市になれる可能性があります。大いに期待したいところです。
上山 光一