毎年6月は住民税の天引き額の変更月

毎年6月になると、給料の手取り額が大きく変わっている方はいませんか? その原因は住民税の天引き額のせいかもしれません。

そもそも、給与天引きされる住民税の金額はどのように決まっているのでしょうか。住民税の給与天引きは毎年6月から翌年5月が1つの期間となっています。そして、毎月の給与やボーナス以外に収入がない場合は、その天引きされる住民税は、前年の給与やボーナスの金額ベースになっています。

たとえば、平成30年6月から平成31年5月の期間の住民税の数字のベースは平成29年の給与の数字ということになります。今もらっている給料に関係なく、前年の収入がベースになっている点が特徴です。

昇給で翌年の住民税天引き額がアップ

収入が給料のみの場合、住民税の天引き額が大きく変わる原因は、大きく分けて2つあります。1つは単純に年収が上がったということです。とある年の4月に昇給があって給料の金額が上がっても、その金額が住民税に反映されるのは、翌年の6月です。

つまり、1年ちょっとの間は昇給前の年収をベースに計算された住民税の額で天引きが行われ、忘れたころに昇給が住民税に影響してくるのです。昇給だけでなく、業績が良くてボーナスがいつもより多く出たという場合も同様に、翌年の住民税天引き額を上昇させます。

年収や所得控除の状況にもよりますが、上がった年収のおよそ5〜10%の住民税負担が発生します。住民税の税率は10%ですが、給与には給与所得控除というものがあったり、給与が増えたことで社会保険料控除もアップしたりするので、単純に年収増加額の10%の住民税がアップするというわけではないです。

たとえば、年収が50万円アップすれば、年間の住民税負担は約2万5,000円〜5万円アップします。毎月の給与天引きに換算すれば約2,000円~4,200円程度の手取りダウンとなる計算です。

所得控除の変化は住民税の天引き額に直結

住民税の天引き額が変わる原因のもう1つは、所得控除の変化です。所得控除とは、医療費やふるさと納税などの寄付金、生命保険料といった特定の支出額や家族の扶養などについて、特定の金額を所得から控除できる制度です。

ある年に多額の医療費が発生して、確定申告で医療費控除を受けた結果、翌年の6月の給与天引き額は大幅に減ったけれど、次の年には元に戻ってしまったなどというケースが住民税天引き額がアップする典型例です。そのほかにも、配偶者や子どもが就職して扶養から外れた結果、扶養控除の金額が上がってしまったということもあります。

たとえば、大学生の子を扶養に入れていた場合、住民税の扶養控除の金額は45万円です。就職などによりこの扶養が外れれば、その分所得がアップします。

所得控除の変化は、年収の変化と異なり、その金額がそのまま住民税の計算のベースに直結します。45万円所得が上がれば、住民税は税率10%なので、4万5,000円の年間負担アップとなります。月額にすると3,750円の手取りダウンです。

ちなみに、住宅ローン控除を受けられなくなったということも原因の1つとして考えられますが、住宅ローン控除は所得税に適用して、控除しきれなかった額を住民税に回すという形式になります。住宅ローン控除は所得税側で全額控除済みのケースが多いので、住民税に影響することはまれかもしれません。

渋田 貴正