食材やガソリン、電気代などありとあらゆるものの価格が上昇し続けています。特に、生活に欠かせないものの値上がりはダイレクトに家計を圧迫します。

筆者はFPとして、若年層から富裕層までの幅広い層の相談を受けてきましたが、「インフレに負けない資産の作り方」や「日々の生活費(固定費)の見直し」など、今のインフレ時代ならではの相談が増えています。

そんな中、政府は物価上昇の影響を鑑み、定額減税の対象とならない住民税非課税世帯への10万円給付を進めています。

テレビのニュースや新聞などで最近よく取り上げられていますが、これとは別に岸田総理が6月21日の会見で「低所得者世帯や年金生活世帯などに追加の給付金を」と発言したことにより、両者を混同している方も見られます。

そこで今回は、そもそも住民税非課税世帯とはといったところから、具体的な政策内容、実際の給付額についてまとめていきます。

さらに、高齢者ほど住民税非課税世帯に当てはまりやすいことから、どれぐらいの年齢から該当しやすくなるのか、また高齢者の平均的な貯蓄額にまで話を広げてみていきたいと思います。

1. 年金生活世帯や低所得者世帯への「追加の給付金」は秋の予定(詳細は未定)

岸田総理は、記者会見において8月~10月の電気・ガス料金補助「酷暑乗り切り緊急支援」を行うと明言しました。

さらに「物価高の中で食費の高騰などに苦しんでおられる年金(生活)世帯や低所得者世帯を対象として、追加の給付金で支援することを検討いたします。」としています。

電気・ガス料金補助は始まるものの、追加の給付金については実施が秋ごろとされており、詳細は未定です。

具体的な給付額や対象者については、続報を待ちましょう。

続いて、現在行われている「住民税非課税世帯等に対する10万円の給付」を見ていきます。

2. 住民税非課税世帯等に対する10万円の給付

2024年度新たに住民税が非課税となる世帯等に対し、10万円の給付が進められています。

具体的な対象者は次のとおりです。

2.1 10万円給付の対象者

  • 2024年6月3日時点で住民税非課税の世帯
  • 2024年6月3日時点で住民税均等割のみ課税者である世帯

なお、18歳以下の子どもがいる場合は子ども1人あたり5万円が上乗せされます。

2.2 10万円給付の手続き方法

マイナンバーカードの公金受取口座を登録済みの場合は、原則として手続きが不要となっています。

振込先の口座に間違いや変更がないかを確認しておきましょう。

登録していない方は手続きが必要になる可能性があります。申請書が届いたら必ず確認するようにしましょう。

申請期限は自治体によって異なりますが。市町村によって8月31日や10月31日など異なります。必ず最新の情報をご確認ください。

住民税非課税世帯や均等割のみ課税世帯には、2023年度にも合計10万円の給付が行われており、こちらが支給された人は対象外です。

では、そもそもどのような人が住民税非課税世帯や均等割のみ課税世帯に該当するのでしょうか。

次章にて、目安となる所得額を見ていきましょう。

3. 住民税非課税世帯の該当要件とは?所得の目安

そもそも住民税は、前年の所得をもとに決定されます。

もし所得が0円であれば当然住民税もかからない(=非課税)とはなりますが、所得があっても一定以下であれば非課税になります。

なお、世帯全員の住民税が非課税の場合、その世帯は「住民税非課税世帯」となります。

住民税非課税世帯になる条件は自治体によって異なりますが、ここでは東京23区内における条件を確認しましょう。

3.1 住民税非課税世帯に該当する所得要件(東京都23区内)

(1) 生活保護法による生活扶助を受けている方
 
(2) 障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4000円未満)の方
 
(3) 前年中の合計所得金額が下記の方

  • 同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合:35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
  • 同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合:45万円以下

上記より、「同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合」の目安は所得45万円以下となることがわかります。

しかし、所得と年収は異なるので、イメージがわかない方もいるでしょう。

たとえば東京都港区の場合、年収目安として以下が紹介されています。

3.2 住民税非課税世帯に該当する年収(港区)

【写真1枚目/全4枚】港区における住民税非課税世帯の年収条件。写真後半では「年代別の住民税非課税世帯の割合」を一覧表で比較1/4

港区における住民税非課税世帯の年収条件

出所:港区「住民税(特別区民税・都民税)はどういう場合に非課税になりますか。」

  • アルバイトやパート:給与収入が100万円以下
  • 65歳以上で年金受給のみ:年金収入が155万円以下
  • 65歳未満で年金受給のみ:年金収入が105万円以下
  • 不動産収入等所得:収入から必要経費を引き、合計所得が45万円以下(令和2年度まで35万円以下)

給与収入を得る場合、所得45万円になる目安年収は100万円です。

一方、年金収入の場合は65歳以上で155万円、65歳未満で105万円となっています。

年金収入のほうが年収換算目安の金額が高いため、年金生活者の方が住民税非課税世帯に該当しやすいのが現状です。

次章ではわかりやすように、年代別の住民税非課税世帯の割合も確認してみましょう。

4. 「住民税非課税世帯」年代別の割合を比較。実際に高齢者が多いのか

7月5日に公表された厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」によると、年代別の住民税非課税世帯の割合(全世帯に占める住民税非課税世帯の割合)は以下のとおりとなりました。

住民税非課税世帯の年代別割合2/4

【一覧表】住民税非課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」をもとにLIMO編集部作成

  • 30歳代:12.0%
  • 40歳代:10.0%
  • 50歳代:13.6%
  • 60歳代:21.7%
  • 70歳代:35.9%
  • 80歳代:52.5%
  • 65歳以上(再掲):38.1%
  • 75歳以上(再掲):49.1%

年代があがるほど割合が高まります。65歳以上では38.1%が住民税非課税世帯に該当するのですね。

「均等割のみ課税」世帯を含めると、10万円給付の対象となる世帯はもっと高まると予想されます。

ただし、住民税非課税世帯の要件に保有資産は含まれません。つまり、年金収入は155万円未満で多くの資産を保有する人も、給付金の対象にはなります。

5. 70歳代の平均貯蓄額

参考までに、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」から、70歳代の単身世帯・二人以上世帯の貯蓄額を見ていきます。

5.1 70歳代の単身世帯の貯蓄一覧

  • 金融資産非保有:26.7%
  • 100万円未満:5.8%
  • 100~200万円未満:4.3%
  • 200~300万円未満:4.1%
  • 300~400万円未満:3.3%
  • 400~500万円未満:2.5%
  • 500~700万円未満:6.6%
  • 700~1000万円未満:5.1%
  • 1000~1500万円未満:8.6%
  • 1500~2000万円未満:5.3%
  • 2000~3000万円未満:8.2%
  • 3000万円以上:17.3%

平均:1529万円
中央値:500万円

5.2 70歳代の二人以上世帯の貯蓄一覧

続いて、二人以上世帯における貯蓄額です。

  • 金融資産非保有:19.2%
  • 100万円未満:5.6%
  • 100~200万円未満:5.1%
  • 200~300万円未満:4.3%
  • 300~400万円未満:4.7%
  • 400~500万円未満:2.5%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:5.8%
  • 1000~1500万円未満:10.2%
  • 1500~2000万円未満:6.6%
  • 2000~3000万円未満:7.4%
  • 3000万円以上:19.7%

平均:1757万円
中央値:700万円

平均額や3000万円以上の割合を見ると、比較的貯蓄額に余裕がある世帯も多いようです。

しかし、「金融資産非保有」は単身世帯で26.7%、二人以上世帯で19.2%にのぼり、苦しい生活を送る世帯も多いでしょう。

資産や年金が少ない高齢者世帯にとっては、やはり給付金が支えになっているといえます。

6. まとめにかえて

一昔前までは60歳以降は今までで準備した貯蓄を切り崩して生活をしていくことが一般的でしたが、「平均寿命の延び」や「公的年金制度の不安視」、「物価上昇」等の要因により、現在では60歳以降も貯蓄を継続される方が増えています。

セカンドライフに向けた準備は十人十色であり、使い方もさまざまです。

現役時代にしっかりと老後資金を準備して、いわゆる「切り崩し」の生活をしている世帯もいれば、老後を迎た後も今後の生活のために貯蓄を続ける世帯もあります。また、特に準備をされていない「金融資産なし」世帯も実は多いものです。

近年では、日々の「物価上昇」により生活費や固定費の見直しを検討する方も多いのではないでしょうか。

月々の収支を見直し、いわゆる「貯蓄額」を増やすことで、将来資金への充当額を増やすことも大切です。インフレの影響を受け、将来必要な「お金」も実質年々増加する現代において、できるだけ早い段階で老後を考え行動することが大切です。

そのためには、「貯蓄」だけではなく「投資」を活用していくことも一つの選択肢です。

しかし投資は預金とは異なり、元本保証がなくリスクを伴うものです。必要な資産を準備していくには話題の制度だけを取り入れるのではなく、自分にあった資産運用を選択しリスクと上手に付き合っていくことが大切です。

参考資料

奥田 朝