5. 将来の年金見通し

現在の年金受給者の平均受給額でも、およそ2000万円不足することが予測できましたが、2024年度の所得代替率は61.2%です。

財政検証の経済前提(3)の「過去30年投影ケース」では、将来的に所得代替率は50.4%まで下がることが予測されているので、さらに、厳しい状況となるでしょう。

そのため、財政検証のオプション試算で示した制度改革が必要となってきます。

今回、「基礎年金の拠出期間延長」は見送りとなりましたが、将来的には再度検討される可能性もあります。

「被用者保険の適用拡大」と「在職老齢年金制度の見直し」は年金改革に留まらず、人出不足の解消にもなるため、実現性は高いといえます。

特に「被用者保険の適用拡大」は2024年10月に、50人超規模の企業まで適用範囲が拡大することが決まっており、更なる適用拡大に向けての検討は十分考えられます。

この制度改正は、いわゆる「年収の壁」や第3号被保険者制度の見直しにもつながります。

公的年金制度を長期にわたって持続させるためには、社会や経済の変化に応じた、適切な制度改革が必要となります。

そのために、将来の姿がどうなるかを試算する「財政検証」がとても重要になります。そこで改善が見込まれる制度改革があれば、積極的に取り組むべきでしょう。

若い人ほど、将来の年金について悲観的になっていると思いますが、検証と制度改革によって、健全化に努めていることを知っておくと、年金制度への不安はいくらか和らぐのではないでしょうか。

参考資料

石倉 博子