2. 制度改革を仮定したオプション試算

このほかに、一定の制度改革を仮定したオプション試算も行われました。5つのオプション試算とその結果の概要をまとめました。

2.1 被用者保険の更なる適用拡大

パートやアルバイトなどの被用者保険(厚生年金と健康保険)への加入条件を緩和することで、加入者が増加した場合

<試算結果>

「50人以上である企業規模要件の廃止と5人以上の個人事業所の非適用業種を無くした場合」に約90万人拡大するシナリオでは、経済前提(2)の「成長型経済移行・継続ケース」のもとでは、所得代替率は、57.6%から58.6%に改善し、経済前提(3)の「過去30年投影ケース」もとでは、50.4%から51.3%に改善することがわかりました。

2.2 基礎年金の拠出期間延長・給付増額

基礎年金(国民年金)の保険料拠出期間を現行の40年から45年間に延長し、拠出期間が伸びた分に合わせて基礎年金が増額する仕組みとした場合

<試算結果>

経済前提(2)の「成長型経済移行・継続ケース」のもとでは、所得代替率は57.6%から64.7%、経済前提(3)の「過去30年投影ケース」もとでは、50.4%から57.3%とどちらも大きく改善することがわかりました。

2.3 マクロ経済スライドの調整期間の一致

基礎年金(1階)と報酬比例部分(2階)に係るマクロ経済スライドの調整期間を一致させた場合。(現状、基礎年金の方が財政状況が悪いため、報酬比例部分よりも調整期間が長くなっている)

<試算結果>

経済前提(2)の「成長型経済移行・継続ケース」のもとでは、所得代替率は57.6%から61.2%、経済前提(3)の「過去30年投影ケース」もとでは、50.4%から56.2%と改善することがわかりました。

2.4 在職老齢年金制度

一定以上の賃金を得ている65歳以上の老齢厚生年金受給者を対象に、老齢厚生年金の一部または全部の支給を停止する仕組み(在職老齢年金制度)の見直しを行った場合

<試算結果>

働く年金受給者の給付が増加する一方、将来の受給世代の給付水準が低下する結果に。
経済前提(3)の「過去30年投影ケース」もとでは、将来の報酬比例部分の所得代替率を0.5%押し下げる影響が示されました。

2.5 標準報酬月額の上限

厚生年金の標準報酬月額の上限を見直した場合。
現行の65万円から、(1)75万円、(2)83万円、(3)98万円に上限をあげるケースを試算

<試算結果>

上限該当者や企業の保険料負担は増加する一方、上限該当者の老齢厚生年金が増加することに加え、将来の受給世代の給付水準も上昇することがわかりました。また、報酬比例部分の所得代替率を、(1)0.2%、(2)0.4%、(3)0.5%押し上げる効果がありました。