ひと昔前は、ハンディキャップとさえ言われることもあった左利き。もし子どもが左利きだったら、右手を使うように直してあげたほうがいいのでしょうか。

現代では左利きは頭がいいとか野球で有利だとかポジティブな意見もありますが、実際に左利きのまま大きくなったときに困ることがあるのかも少し気になりますよね。経験者のエピソードを参考にしながら、利き手について考えてみましょう。

左利きで不便に感じることは?

まず、左利きのまま大人になったみなさんに、不便に感じていることがあるかを聞いてみました。

「駅の改札を通るとき、つい左手で切符を持ってしまいます。でも切符を入れるところは、たいてい右側。右手に荷物を持っていると、とっさに持ち替えることもできません。結果、手をクロスすることになって少し不便です。自動販売機のお金を入れるときも、難しさを感じます」

「ハサミや包丁、左利き用って高い! 欲しいときに100円ショップとかでパッと買えません」

「いちいち『左利きなんだ!』とか、『左で文字を書いてると難しそうに見えるね』とか突っ込まれます。小さい頃は、なんだか自分を変人扱いされているようで『ぎっちょ』と言われるのが嫌でした」

「テストのとき用紙の左半分に問題が、右半分に回答を書き込む欄があるんですよ。回答を書いて次の問題を読むたびに、いちいち手を少し浮かせなければいけません。小さいことだけど、不利だなと思います」

ちょっとしたことですが、毎日の生活で少しずつ感じるストレス。本人にとっては、しんどいこともあるかもしれませんね。

子どもが左利きかもと感じたら、みんなどうしてる?

次に「もしかして、うちの子左利きかも?」と感じているママたちに、矯正しているか聞いてみました。

「無理に右でやらせようとすると、左のときよりうまくできなくて、子どもが『自分は不器用なんだ』と自信をなくすと聞きました。それもあって、自然に使うほうでやらせています」

「聞いたところによると、左利きの子どもは無意識に“左手のほうが何ごとも上手にこなせる”ことを分かっているらしいですね。それなのに親が右手にばかりに持たせようとすると、ストレスを与えてしまいそうだなと思っています。だから、直すことはしません。考えてみたら、私がもし他人に『左利きになれ』と無理強いされたら嫌ですもん」

「なんとなく練習箸も右手用を買ったし、クレヨンも右手に持たせています。左利きがダメとはまったく思っていません。けど、私が左利きで不便を感じていたので…最初から右で使わせていれば、自然と右で覚えるかと思ってのことです」

「確かに最近は、はさみも左利き用があるけど…将来学校でひとりだけ違うものを持っていると、みんなにからかわれないか心配です。思いもしないことが、いじめのきっかけになることもあるから。考えすぎなのは分かっていますが、親としては将来なるべく嫌な思いをしてほしくない気持ちもあって。直そうと思っています」

少数派を否定するような声かけは避けよう

なぜ昔の人は、左利きをハンディキャップとして直させようとしていたのでしょうか。それは、単に左利きが“少数派であるから”だけのように感じることがあります。左利きは人類の約1割程度しか存在せず、その割合は長い間変わっていないという説もあるようです。

少数派に属することで将来子どもが不便に感じないために、右手を使うように促してみるのは決して悪いことではないでしょう。しかし、単に「みんなが右だから、右で覚えたほうがいい」と感じられるような声かけは、避けたいものですね。

「みんなと違う子は変」という発想は、将来いじめや差別につながる可能性も考えられます。右利きか左利きかということよりも、その違いを将来子どもがどう受け止められるかに注意を向けることも大切かもしれません。

違いを受け入れられる世の中でありたい

そもそも本来は、利き手がどっちか?なんて気にとめる必要すらないのかもしれません。なぜなら、それは生まれつきのものだからです。

それなのに利き手についての議論があちこちでされているということは、まだまだ多様性を認められない人が多いのかもしれないと考えてしまいます。人と違うことも個性だという考えが本当の意味で世の中に浸透すれば、ママたちの悩みがひとつ消えるのかもしれませんね。

桜井 まどか