親であれば、子どもが起こす病状の中でも「けいれん」は最も恐れる分野に入るでしょう。子どもが起こすけいれんで、有名なのが熱性けいれん。他にも髄膜炎や脳炎、てんかん、泣き入りひきつけでけいれんを起こすことがあります。

筆者は1人目の子育て中に子どもがけいれんを起こすことを知り、けいれんを起こした時の対応法も頭に入れていたつもりでした。ところが先日、3人目である1歳1カ月の長女がけいれんを起こしたとき、頭の中は真っ白になりました。

けいれんを起こした流れ

けいれんが起きた日は、家族全員がかかった胃腸炎を長女も発症して3日目のことでした。初日は嘔吐がひどく、夜間救急へ駆け込み吐き気止めの座薬を挿入。次の日に下痢をしましたが、3日目は嘔吐も下痢も落ち着き、熱も下がっていました。元気な様子で、「もう治るだろう」と思っていた午後のことです。

幼稚園バスで帰ったきた次男が、病明けの登園で疲れ、道路で大泣きをして暴れていました。車が危ないので筆者は長女を抱っこしながら次男を追いかけ、20分ほどかかって家に入れました。それでも玄関で大騒ぎする次男。「次男を抱っこして落ち着かせなければ」と思い、長女をリビングのベビー布団に寝かせ、玄関へ向かいました。

するとすぐに長女の泣き声がしたため、リビングへ戻ったとろ、長女が仰向けで寝たまま薄目で首をのけぞっていました。「次男のことばかり頭にあったから、長女を置いたときにケガでもさせただろうか」と不安に思い抱き上げると、長女の体が震え始めます。

驚いて再度ベビー布団に寝かせると、ガタガタ震えながら白目をむき、口が変に曲がっていきました。その表情を見たとき、とても生きている人間の顔とは思えず、もうダメかと思いました。少しの希望さえ見つけられないような表情をしていたのです。

このとき119番をし、長女の状態を説明しました。説明と言っても、ほとんど叫びながら話をしていました。長女は震えが止まった後、急に体が硬直し始めました。呼吸ができないと思い、口を開けようとしましたが開きません。「人工呼吸をしましょう」と話したところで、ふいに胸元を触ったところ、心臓が元気に動いていたのでそれを電話口で伝えました。

その後すぐに長女の瞳に黒目が戻り、ボーッとしていましたが意識は戻りました。そこで電話を切り、救急車が到着しました。

胃腸炎でけいれん

救急隊員の方と話すまで、筆者は外傷性のけいれんだと思い込んでいました。熱もないので、けいれんを起こす理由が見当たらなかったのです。ただ、思えば気をつけてベビー布団に寝かせており、けいれんを起こすほどのケガどころか、ケガ自体していませんでした。

救急車の中での長女は大泣きで、「泣けているのでそこまで心配ないでしょう。首も痛ければここまで動かせないと思います」と言われ、それよりも胃腸炎の話を聞かれました。

病院では胃腸炎のウイルス検査と血糖の検査をし、ウイルスは不明でしたが、低血糖であることがわかりました。点滴を受け、長女は泣き続けていたので別の原因もあるかもしれないという話になり、泣き止むまで観察しました。30分経って泣き止んだため、帰宅となりました。

このとき初めて知ったのですが、医師から「胃腸炎でけいれんを起こすことがあるので、その可能性が高い」と聞きました。胃腸炎でけいれんを起こすと何度も起こし、入院して投薬する必要があることもあるそうですが、長女はこの1回のみで終わりました。けいれん当日は元気がありませんでしたが、2日経ち普段通りに戻りました。

けいれんを目撃した親のケアを

長女の体調は良くなっていきましたが、けいれんを目撃した筆者の心の戻りはゆっくりでした。2〜3日は頭があまり働かず、喋れず、体も動かなくてボーっと座っていることもありました。けいれん中の長女の表情が忘れず、ふいに涙することもありました。一方でけいれん時の記憶をところどころ忘れている部分もあり、脳が忘れたがっていると思いました。

けいれんした翌日、心配した義家族が手伝いに来てくれたのですが、そのとき言われた何気ない一言に傷つき、ボロボロ涙が溢れたこともありました。

子どもはたくさんの表情を見せてくれます。笑顔、真剣な表情、ひょうきんな顔、泣き顔、怒った顔、悩んでいる顔…その中でもけいれんしたときの表情は、できるならば一生見たくはないと思う、我が子のとても悲しい表情でした。

筆者は中学生のときに父を亡くしましたが、父の最期、自分の無力さを痛感したことがあります。そのときと同じように、長女がけいれんして表情を変え体を震わせても、自分には何もできない無力さも感じました。

「けいれんした」と言われても、ピンとこない人も多いと思います。私も経験をしなければ、重大性を感じ大変心配しながらも、親の受けたショックの深さまでは理解できなかったと思います。実際には想像以上のショックを受けるものなので、経験した親のメンタル面のケアも必要だと感じます。周囲に子どものけいれんを経験された方がいたら、精神的な負荷を思い、優しい言葉をかけてあげてください。

宮野 茉莉子