2. 社会保険に加入するメリット
年収の壁を超えないように意識する短時間労働者の方は「手取り収入を減らしたくない」という考えをお持ちではないでしょうか。
社会保険に加入すると、家族の扶養から外れて自分が社会保険料を納める必要があるため、心理的に抵抗を覚えるのも無理はありません。
しかし、社会保険に加入すれば社会保障給付が手厚くなるメリットがあります。
将来受け取れる厚生年金が増えたり、健康保険に加入すれば傷病手当金を受けられたりするメリットがある点は知っておくべきでしょう。
厚生年金の報酬比例部分は、2003年4月以降の加入期間については「平均標準報酬額✕5.481/1000✕加入月数」で計算します。
例えば、月収10万円で社会保険に加入すると「10万円✕5.481/1000✕1ヶ月」で約548円、1年間社会保険に加入すれば将来の年金額が約5480円増加します。
ケガや病気で連続する3日間を含み4日以上休業したときには、健康保険から傷病手当金を受給できます。
2.1 全国健康保険協会が公表している「傷病手当金」の支給額
1日あたりの金額(支給開始日(一番最初に給付が支給される日)以前の継続した12ヶ月間の隔月の標準月額を平均した額)÷30日✕2/3
社会保険への加入は、デメリットばかりではありません。長生きリスクに備えたり、ケガや病気で働けなくなったときの備えを得られるメリットがあります。
社会保険の適用範囲が拡大されるのを機に、年金制度や健康保険制度の理解を深めてみてはいかがでしょうか。
3. まとめにかえて
2024年10月から社会保険の適用範囲が拡大され、今後は企業規模要件が撤廃される可能性も示唆されています。
社会保険適用対象となる方が増えると見込まれるため、社会保険に関する理解を深めることは有意義といえるでしょう。
たしかに社会保険料の納付により、手取り額が減少してしまうデメリットがある点は否めません。しかし、将来受け取れる年金額が増え、ケガや病気の際に傷病手当金が受け取れるなどメリットがある点も押さえておきましょう。
参考資料
- 厚生労働省「第8回 働き方の多様化を踏まえた被用者保険の適用の在り方に関する懇談会 議論の取りまとめ(案)」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 日本年金機構「は行 報酬比例部分」
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
柴田 充輝