2.3 マクロ経済スライドの調整期間の一致

マクロ経済スライドによる給付水準調整の終了時期は、基礎年金と厚生年金とでは異なります。

基礎年金は加入者が減少しているのに対し、厚生年金加入者は増えているからです。

両者を一致させた場合、所得代替率は次の通りアップします。

  • 成長型経済移行・継続コース:57.6%→61.2%
  • 過去30年投影コース:50.4%→56.2%

2.4 在職老齢年金制度

在職老齢年金制度とは、働きながら年金を受け取る場合、年金額や給与所得の多い人の老齢厚生年金の一部または全部が支給停止される仕組みのことです。

この制度によって、年金の支給は抑えられています。

制度が廃止されると働きながら年金を受け取る人の年金額はアップしますが、所得代替率は低下(▲0.5%)します。

2.5 標準報酬月額の上限

厚生年金の保険料や年金額の計算基礎となる標準報酬月額には、65万円の上限が設けられています。

上限の金額がアップすると、収入が高い会社員の保険料がアップする一方、年金額は上昇し所得代替率もアップします。

3. まとめにかえて

2024年度の財政検証によると、現在61.2%の所得代替率は「過去30年投影コース」では50.4%まで低下するものの、最低ラインの50%は維持される見込みです。

ただし、前提条件が変われば年金額は大きく変動するため、老後に備えた自助努力が必要です。

5年毎に行われる財政検証を継続的に確認して年金財政の状況をチェックするとともに、老後計画を適宜見直しましょう。

参考資料

西岡 秀泰