1.2 公的年金の今後の見通し
財政検証の見通しは、出生率や死亡率、就業率、生産性、物価・賃金上昇率などについて何パターンかの前提条件を設定して所得代替率を予想します。
給付水準の調整終了年度(※)と最終的な所得代替率の見通しは次の通りです。
※マクロ経済スライドによる給付水準調整が終了する年度。
年金の給付水準を所定のルールに基づいて減額し、年金財政の給付と負担のバランスが均衡すると調整は終了します。
【前提条件:2029年度の所得代替率・調整終了時の所得代替率・実質経済成長率】
- パターン1(高成長実現コース):60.3%・56.9%(2039年)・1.6%
- パターン2(成長型経済移行・継続コース):60.3%・57.6%(2037年)・1.1%
- パターン3(過去30年投影コース):60.1%・50.4%(2057年)・▲0.1%
- パターン4(1人当たりゼロ成長コース):59.4%・50.1%(2059年)・▲0.7%
一定の経済成長(パターン1.2)ができれば所得代替率の低下は5%くらいで収まりますが、経済成長率が低迷(パターン3)すると50.4%まで低下します。
パターン3の「過去30年投影コース」は、今後の経済成長率などが過去30年と同様であるという前提での試算です。
1人当たりの実質経済成長率がほとんど上がらないケース(パターン4)では、2059年度に国民年金の積立金がなくなり、それ以降の所得代替率は37%〜33%程度になる可能性もあります。
財政検証の現状と今後の見通しについて解説してきましたが、年金制度は今後どのような見直しが行われるのでしょうか。
財政検証のオプション試算より、今後の制度改正を考えていきましょう。