株式投資をはじめたばかりの初心者がいきなり将来株価が10倍になる銘柄に出会えるものなのでしょうか。
もし、そんな夢のような話があるとするのであれば、眉唾(まゆつば)かと思う人も出てくるでしょう。
今回は、そうした10倍株に出会うために楽してお得な方法を見ていきましょう。
フィデリティのリンチ氏も口にした10倍株とは何か
10倍株とはそのままずばり「株価が買値よりも10倍も上昇する銘柄」です。そんな言葉存在するのか?とお考えかもしれませんが、この言葉は米国の「テンバガー」という英語から来ています。
世界でも最も有名な運用会社として知られるフィデリティの伝説のファンドマネージャーのピーター・リンチも口にしていた言葉です。
「プロ投資家は10倍株に出会えるかもしれないが、個人投資家で投資を始めたばかりの初心者にそんなことができるのであろうか」とお考えの方もいると思います。では、そうしたプロの投資家の知恵を簡単に借りる方法を見ていきましょう。
10倍株を簡単に見出す方法とは
先に触れたピーター・リンチはフィデリティで運用される投資信託(ミューチュアル・ファンド)のファンドマネージャーでした。
ピーター・リンチはすでに運用の現場からは退いていますが、フィデリティのファンドマネージャーがどういった銘柄に投資をしているのかを知ることができたらどんなに銘柄発掘が楽になるのでしょうか。
実は、ファンドマネージャーの運用内容や保有銘柄を知る方法があります。それは、各ファンドが定期的に公開している「運用報告書」を見ることでどのような銘柄に投資をしているかを知ることができます。
通常は、ポートフォリオの上位10銘柄(トップ10銘柄)を公開しています。週報、月報なども期間ごとに開示される内容も異なり、公開されるまでに時差があるものの、多少のタイムラグはありますが、個人投資家でもその投資内容を知ることができます。
大型株ファンドよりも小型株ファンドに注目
大型株ファンドですと、大手自動車メーカーやメガバンク、通信会社など、おおよお簡単に10倍になる銘柄が含まれていないようなトップ10銘柄が並びます。これは、通常はTOPIXをベンチマークとして運用しているために、ファンドマネージャーはベンチマークの構成比率が高い銘柄を組み入れないといけないために、仕方がないことといえます。
一方、時価総額の比較的小さい銘柄で構成されている小型株ファンドの投資信託については、ベンチマークなども設定されていないこともあり(それはそれで問題なのですが)、ファンドマネージャーが自信を持った銘柄がトップ10を占めることがあります。
そうした銘柄にはその後10倍になる銘柄も少なくありません。運用会社で四六時中良い銘柄を探し求めているプロ投資家でありますから、個人投資家よりも情報のアドバンテージもあるでしょうし、そもそも調査にかけている時間が違います。
小型株ファンドの運用報告書は投資アイデアの宝箱
では、小型株ファンドのベンチマークについて考えてみましょう。小型株ファンドのベンチマークはそもそもが時価総額が小さい銘柄、また多くの銘柄数で構成されます。したがって、大型ファンドのベンチマークとは異なり、ポートフォリオ構成銘柄のトップ10における各銘柄の構成比率は小さくなります。
これはどのような意味を持つかというと、運用者にとって上位の銘柄も将来好調なパフォーマンスが期待できないと思えば、一切ポートフォリオに入れる必要がないということを意味します。
こうしてみると個人投資家が株価が将来10倍も上がるような「10倍株」を見出そうとすれば、小型株ファンドに注目すべきだというのはご理解いただけるでしょうか。
大型株ファンドはなぜ上がらない銘柄も保有するのか
一方、大型株ではそのような状況にはありません。
たとえば、大型株のベンチマークにおいて、A銀行がベンチマークの5%を占めるとします。運用者はA銀行は将来ベンチマークに対して株価のパフォーマンスは下回ると考えたとします。つまり、A銀行株には自信を持てないということです。結果どのような投資行動となるかというと、A銀行株を運用しているポートフォリオの時価総額のうち、5%よりも低い比率、たとえば3%相当を購入します。
「A銀行株の株価が将来ベンチマークに対しが下回ると考えるのに、なぜ購入するのか」と疑問に思われる方も多いかと思います。これは、運用におけるリスク管理からは良くみられる投資行動です。
運用者からすると、A銀行に関しては、ベンチマークの5%に対して、運用している総額のうち3%しか購入していないわけですから、「アンダーウェート」していることになります。つまり、A銀行株のベンチマークに対してのリスクを減らしながらも、A銀行株がベンチマーク以上には上がるとは考えていないということを表しています。
ただし、投資行動としてはA銀行株を買うということになり、その規模によってはポートフォリオのトップ10以内に位置することもあります。この点が投資初心者にはわかりずらい点かと思います。
小型株ファンドは運用上の制約が少ない
小型株ファンドの場合は、ベンチマークが異なることで、運用上の制約がすくなることが多いです。
その理由は大型株ファンドで見てきたことと反対を考えればわかります。小型株ファンドはベンチマークにおけるトップ10の銘柄の各構成比率が小さいことが多いからです。
たとえば、ベンチマークでトップ10の構成銘柄でベンチマークに対して2%を占める銘柄があったとします。運用者がその銘柄が気に入らなければ、全く購入しないという判断もできます。その際には、「マイナス2%のアンダーウェート」をしている状況です。
また、ベンチマークにおける各銘柄の構成比率が小さいということは、将来のパフォーマンスに自信のある銘柄をベンチマークに組みいれられている比率よりも多めに持つ、つまり「オーバーウェート」しようと思えば、大型株ファンドと比べると比較的簡単にできます。組み入れたいと考えている銘柄のベンチマークに占める比率がほとんどゼロに近いような場合には、ポートフォリオの時価総額分のうち2%を購入すれば、ほぼそのまま「オーバーウェート」することができます。
大型株ファンドで、ベンチマークでの構成比率が5%を占める銘柄を2%の「オーバーウェート」にしようと思えば、ポートフォリオの時価総額のうち7%分を購入しなければなりません。実務上は、他の銘柄の売却と合わせて、手間のかかる作業といえます。
「10倍株」を楽して探すには小型株ファンドの運用報告書をみよう
こうして考えると、小型株ファンドの保有額上位10の銘柄は、運用者やアナリストが調査を重ねて、自信をもっている銘柄ばかりだということができます。
ピーター・リンチは運用会社でファンドマネージャーについていながら、株式投資をするにあたっては個人投資家であることのメリットを解いていました。特に、小売業など個人投資家でも日頃接することが多い業種は調査する優位性もあるとしていました。「運用報告書」である公開情報や自分での調査を加えて「10倍株」に出会えるとよいですね。
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