2024年6月7日に資本業務提携契約を発表したRIZAPグループ株式会社とSOMPOホールディングス株式会社。7月1日に開催された共同記者会見では、両社が目指す方向性や具体的な提携内容が示されました。詳細をチェックしていきましょう。

1. SOMPOがRIZAPに300億円を出資する構図

まずは、6月7日時点で発表されていた情報をおさらいしておきましょう。両社の資本提携の詳細は以下の通りです。

  • RIZAPグループは第三者割当の方法で、SOMPOホールディングスに対してRIZAPグループの普通株式29,069,767株(発行済株式数の4.87%)を割り当てる
  • RIZAPグループの子会社であるRIZAP株式会社も第三者割当で、SOMPOホールディングスに対して普通株式を割り当て、200億円の払い込みを受ける
  • これによって、SOMPOホールディングスのRIZAPに対する出資比率は23%となる

業務提携の内容としては、以下の4つの方針が示されていました。

(1)SOMPOグループの国内の顧客基盤(約2500万人)に向けたchocoZAPの利用促進等、RIZAP グループ会社の商品・サービスの浸透に向けた各種施策の実施
(2)chocoZAP利用者へのSOMPOグループ会社が提供するサービスの紹介等を含む、RIZAPグループの顧客層(約120万人のchocoZAP会員)へのSOMPOグループ会社の商品・サービスの浸透に向けた各種施策の実施
(3)法令・ガイドライン等の遵守とお客さま同意を前提に、SOMPOグループの損保、生保、介護事業の顧客及びデータ基盤とRIZAPグループが持つライフログデータや指導ノウハウなどを組み合わせることによる、顧客ニーズや健康状態に即した新サービス・新商品の研究開発・提供
(4)SOMPOが展開している介護事業やヘルスケア分野等におけるRIZAPの事業活用も含めた協業の促進

RIZAPグループとSOMPOホールディングスが目指すビジョン1/9

資料

出所:2024年7月1日に開催された記者会見資料

7月1日の記者会見では、これらを踏まえてどのような補完関係で提携を進めていくのか、各事業で具体的にどのような連携が行われるのか、両社のトップから説明がありました。

2. ミッシングピースを補完して目指す「ウェルビーイング事業」の成長

2.1 SOMPOホールディングスのミッシングピース

今回の提携でキーワードとなるのが「ウェルビーイング」です。SOMPOホールディングスは新中期経営計画において、国内生保・介護・コーポレートウェルネス事業を横断する成長エンジンとしてウェルビーイング事業に注力することを表明しています。

SOMPOホールディングスの新中期経営計画2/9

資料

出所:2024年7月1日に開催された記者会見資料

奥村幹夫・グループCEO 取締役 代表執行役社長は記者会見で「高齢化社会の不安は健康・老後資金・介護からきている。かつては家族がその不安を埋めていたが、現代はそれが難しい社会になりつつある。そこで注力していくべきと考えているのが、健康寿命を伸ばすことを目的としたウェルビーイング事業だ」と語り、その重要性を強調しました。

SOMPOホールディングス株式会社の奥村幹夫・グループCEO 取締役 代表執行役社長3/9

スピーチする男性の写真

筆者撮影

ただウェルビーイング事業を成長させるのは単独では難しいとも考えています。予防医療のソリューションには動的データが必要不可欠ですが、同社は国内最大規模の顧客基盤を持っていながら、顧客との接触機会に課題があり、動的データが不足しているからです。

このミッシングピースを埋める存在としてパートナーに選ばれたのが、全国約1500店舗という規模にまでchocoZAPの出店を拡大しているRIZAPグループです。chocoZAPは入館から運動管理までさまざまなログをアプリに集約しているため、リアルだけでなくデジタルの顧客接点も豊富です。また膨大な動的データを可視化・解析する体制も整っています。

2.2 RIZAPグループのミッシングピース

RIZAPグループはSOMPO顧客(約2500万人)や法人顧客基盤の連携による新規会員獲得、SOMPO系列の介護施設(400以上)や販売代理店との連携による新規出店加速が期待されます。出資によるキャッシュフロー改善で戦略の幅が広がるメリットも大きいでしょう。

ただ、より重要性が高いのは短期的な会員獲得&店舗拡大ではなく長期的な戦略として掲げている「ウェルビーイングデータプラットフォームの構築」において頼れるパートナーを獲得できたことです。

同プラットフォームはヘルスケアに関するあらゆるデータを連携・可視化・解析して新たなソリューションを目指すもので、「データの量と質」が生命線となりますが、SOMPOホールディングスはまさにRIZAPグループがカバーできていない領域のデータを有しています。

両社が長期的に目指すウェルビーイングプラットフォームのイメージ4/9

資料

出所:2024年7月1日に開催された記者会見資料

RIZAPグループ株式会社の瀬戸健・代表取締役社長は「chocoZAPで収集している運動や健康に関するライフログに、SOMPOの保険・健康診断・介護などのデータを加えることで、共同研究や新しい健康指標、商品の開発などを加速させていく。誰もがウェルビーイングを実感できる社会の実現に貢献していきたい」と連携によって生み出される具体的な成果について語りました。

RIZAPグループ株式会社の瀬戸健・代表取締役社長5/9

スピーチする男性の写真

筆者撮影

3. 保険・介護・ヘルスケアの分野で新しい提案

3.1 「保険」は「つなぐ・つなげる」で独自性を追求

各事業では具体的にどのような連携をイメージしているのか、詳しくみていきましょう。まず、保険分野では損保ジャパンの保険サービスにchocoZAPの持つ健康支援・行動変容機能をかけ合わせることで、従来にはない新しい保険の提案を行っていきます。

「SOMPO Park」「Insurhealth」「Growbase」などのインターフェースとchocoZAPアプリを連携することで、ユーザーとのデジタル接点を増やし、契約継続率や新たな商品の提案機会につなげたいという狙いもあるようです。

保険事業における連携イメージ6/9

資料

出所:2024年7月1日に開催された記者会見資料

3.2 要介護者以外にも寄り添う「介護」の新しい形

介護の分野では介護施設にchocoZAPを併設したり、近隣の店舗と連携したりすることで、従来から強化している要介護者のアクティビティのグレードをさらに向上させます。また、恩恵を受けられる対象に要介護者だけでなく、その家族や施設スタッフを含めることで、新しい形の介護サービス創出を目指します。

このほか、RIZAPのトレーナーを介護施設に派遣することによる重症化予防やchocoZAPのDXノウハウを取り入れた介護施設の生産性向上サポートなど、多面的な連携を想定して可能性を模索していくとのことです。

介護事業における連携イメージ7/9

資料

出所:2024年7月1日に開催された記者会見資料

3.3 データ解析でより高精度の「ヘルスケア」を実現

ヘルスケア分野では健康状態の確認・改善のプロセスをさらに掘り下げます。確認はこれまで定期健診やメンタルヘルスに限定されていましたが、chocoZAPアプリやchocoZAPメディカルで収集したデータも関連づけることで精度を高めます。

改善はSOMPOひまわり生命やSOMPOヘルスケアが提供していた生活習慣病の重症化予防・保健指導などのサポートに、chocoZAPのトレーニング・食事指導をかけ合わせることで、より効果的なサービスへの進化を図ります。

ヘルスケア事業における連携イメージ8/9

資料

出所:2024年7月1日に開催された記者会見資料

4. 人材交流も加速、異なる企業文化を結びつけるトップの信頼関係

今回の協業では各セクターごとの連携だけでなく、積極的な相互出向による人材交流も実施する方針です。SOMPOからRIZAPへはリスクマネジメント・ファイナンス・内部統制、RIZAPからSOMPOへはマーケティング・サービス開発・調達などのノウハウを共有し、組織づくりの強化につなげていきます。

企業文化が大きく異なる両社ですが、両社のトップ同士は2018年ごろから交流があったとのことで、会見のやりとりからも信頼関係が見て取れました。奥村CEOは「ビジネスモデル上の補完関係だけでなく、トランスフォーメーションにおいてRIZAPの企業文化にも学びたい」と組織改革にも意欲的な姿勢を示し、瀬戸社長も「奥村CEOにはchocoZAP以前からRIZAPがチャレンジングな企業であることをご理解いただいている」とコメントしました。

人材交流によって組織の強化も図る9/9

資料

出所:2024年7月1日に開催された記者会見資料

少子高齢化が進む日本において、予防医療の重要性が語られる機会は増えていますが、両社が構想する「データ収集からソリューション提供まで一貫して実現する予防医療のプラットフォーム」はまだ世界的に例が少ないものです。

これからSOMPO×RIZAP連合がどのように拡大していくのか、またライバルとなる勢力は出てくるのか。保険・介護・ヘルスケアなどの業界を横断してインパクトを与える取り組みなだけに、周辺環境や競合他社の動向も含めて注目したいところです。

参考資料

大蔵 大輔