ロボットの進化はとどまることを知りません。ジャンルを問わず社会の中で欠かせないものとなっているロボットは、医療の現場でももちろん重要な存在です。

その中でも、難しい手術を成功させるための「手術支援ロボット」は、1990年代にアメリカで開発されて以降、世界中で数多くの実績を上げています。より正確な手術を可能にしつつ、さらに医師や患者への負担も減らしているといいます。これからさらに注目されるとみられている手術支援ロボットは、これからの医療にどんな影響を与えるのでしょうか。

業界で「一人勝ち」のロボット

手術支援ロボットは、解析度の高い映像や手よりも細やかな作業を可能にするアームを用いることで、医師がより正確な手術をすることができます。さらに、最小限の大きさの傷口で手術が済むことで、患者の回復も早いとされています。

米国のIntuitive Surgical社が開発した「ダ・ヴィンチ」という手術支援ロボットは、業界では「一人勝ち」の状態で、2014年の時点ですでに60万件近くの手術支援実績を上げています。最近の実績では、背骨と頭蓋骨の間の腫瘍を取り除く「脊索腫除去手術」という難手術に成功したものがあります。

この手術は熟練の外科医でも難しいとされ、成功率は50%ほどで後遺症のリスクも高いとされていますが、「ダ・ヴィンチ」を使用してこの手術を受けた患者は、すでに職場復帰をするほどに回復したそうです。

ロボット大国だけど出遅れている日本

手術支援ロボットがより有効な病気は、ガンや心臓疾患といわれています。この2つは、日本人の死亡原因の1位と2位の病気です。そのような背景もあり、非常に高価で維持費も高いものの、日本の病院でも手術支援ロボットの導入数が増えてきているとのこと。

ロボット産業では世界の注目を集める日本ですが、実は手術支援ロボットに関しては遅れを取っています。それでも、日本ではアームの先端に取り付ける内視鏡技術の開発は進んでいて、ガンなどの早期発見・早期治療に役立つ内視鏡手術がこれから試験的に導入される見込みです。

頼りすぎるのもまだ早い!?

現在、日本では、勤務時間の不規則さや医療事故への責任問題などの理由で、外科医の減少が顕著になってきています。外科手術を行う医師への負担が増えていく中で、手術支援ロボットの導入は外科手術の負担軽減につながると考えられています。

また海外では、すでにロボット手術研修が導入されている医学学校もあります。しかし、研修医も含めて、「医師の技術向上」という観点では、こうした環境に慣れてしまうことで、手術支援ロボットのない一般手術の経験に乏しくなってしまうかもしれないことが危険視されてもいます。

まだ現在は手術「支援」ロボットですが、将来的には外科医による手術自体がロボットに取って代わられる可能性もあります。ここは自動運転などとも同じなのですが、使える部分は積極的に使いつつも、一気にすべてがロボットに切り替わるわけではないという現状では、まだロボットに頼りすぎることは危険なのかもしれません。

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